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「友だち100人できるかな」って、無理無理

 菅野仁著「友だち幻想 人と人の〈つながり〉を考える」(ちくま新書)という本が売れている。

 9月に入ってNHK「おはよう日本」で紹介されたことが影響しているらしい。
 それ以前にも「世界一受けたい授業」でピースの又吉直樹さんが紹介したり、林修先生が「林先生が驚く初耳学」で紹介したりで、その影響もあるようだが、あいにく私はテレビをほとんど見ないので、知らなかった。

 というわけなので、近所の書店で売れ行き1位にランクされていたので読んでみた。
 最初、著者名を見て、「菅野完(すがの・たもつ)かよ、フン」と思ったが、よく見ると「菅野仁(かんの・ひとし)」という人だった。
 宮城教育大学で副学長を務められた社会学者。
 残念ながら2年前、50代の若さでお亡くなりになった。この本は10年前の著作だ。

 これは若い人向けに書かれた本だと思う。中学生でも十分行けるだろう。大学生や若いサラリーマンにもピッタリ合う。もしかしたら家族で読んだほうがいいかもしれない。もちろん、学校や塾の先生も。

 未読の方のために、あえて詳細には触れないが、著者はまず「友だち」をあまりにも重視する風潮に疑義を呈する。「みんな仲良く」なんて無理でしょうというわけだ。適度な距離感を持った人間関係が大事で、そのためには「他者」という(他人というのとは違う)存在を意識すべきだという。

 そうだ、そうだ。
 誰とでも分かりあえるなんて不可能だ。
 でも、学校や会社は「みんな仲良く」が前提になっているな。だから、人間関係に悩んじゃうんだ。

 学者が書いた本だけど、学術書・専門書というわけではない。若い人向けだが、私自身、日ごろ考えていることの整理になった。
 本の中に、人間関係に悩むわが子が登場する。執筆動機はそこかもしれない。結果としてわが子に贈る遺書みたいになってしまったが、私もできればこんな本を遺したいと思った。

 

電車の中でどんな本を読んだらいいか

 今日は少し時間が余ったから、電車の中でどんな本を読むべきかについて話すことにしよう。

 みんな、電車の中で本を読んだことあるか。ないだろうな。
 東京五輪を控えて嘆かわしいぞ。外国人が車内で全員スマホっていう異様な光景見たらビックリすると思うぞ。まあ、弁当食ったり、口半開きにして化粧してるよりはましだけどな。

 電車内読書の功罪だが、みんなどう思う?
 「目が悪くなります」
 そうだな。これが最大にして唯一の欠点だ。

 じゃあ、いい点は?
 「賢そうに見えます」
 そのとおり。あくまでも「賢そう」、look likeだけどな。少なくともバカには見えない。というかバカがばれない。

 「読む本によるんじゃないですか」
 いいとこに気づいたな。そうなんだよ。本のタイトルによっちゃ逆効果になる。
 そこで、カバーをかける。本屋さんでかけてくれるカバーでもいいが、別の本のカバーと架け替えるという手がある。

 「どんな本ですか?」
 村上春樹とかはやめとけよ。こいつファッションで読んでるんじゃないかと思われるからな。やっぱり哲学書かな。幾何学とか物理学とか理数系も賢そうに見える。ただし、「入門」とか「よくわかる」なんてのが付いてるとぶち壊しだ。

 「選ぶ基準が分かりません」
 いい質問だ。みんなが名前だけは知っているが、難しそうで読んだことがないというあたりを狙わなくちゃいけない。教科書に出ているレベルってことだな。ルソーとかカントとかニーチェとか聞いたことあるけど自分じゃ読んだことがない。それを高校生が電車の中で読んでいるというところがポイントだ。サラリーマンのオジサンたちが「今日、俺の前に座ってた女子高生がさ…」なんて会社で話題にするだろうな。

 とりあえず本屋に行け。文庫本コーナーあるだろ。岩波文庫とか講談社学術文庫あたりを探すんだ。で、たしか教科書出てたよなレベルを選ぶ。実際に読んでもいいが、難しいから「見せる用カバー」として使えばいい。ホントに読むのは新潮文庫や文春文庫あたりから選べばいい。

 「ところで、先生がいま持ってる本、それ何ですか?」
 これか。誉田哲也の「武士道ジェネレーション」。「武士道シックスティーン」から始まって「武士道セブンティーン」、「武士道エイティーン」と続く武士道シリーズの第四弾。新渡戸稲造の「武士道」とは違うぞ。こっちは剣道女子が主人公の部活モノだ。

 「俺たちが読む本でしょう」
 そこだよ。若いもんが読むようなのを年寄りが読み、大人が読むようなのを高校生が読む。その意外性に世間は注目するんだよ。
 おっ、チャイムだ。以上、今日の授業終わり。


 

 

書名はズバリ、「埼玉県立浦和高校」

 講談社新書 埼玉県立浦和高校

 「埼玉県立浦和高校~人生力を伸ばす浦高の極意~」(佐藤優・杉山剛士著 講談社新書)。
 学校名がそのまま本のタイトル。
 講談社ほどの大出版社になると、本のタイトルで目を惹こうという発想がないものと見える。

 杉山剛士氏は現・浦和高校校長(平成30年3月末で定年退職予定)。
 佐藤優氏は元外交官で作家・評論家、浦高卒業生。
 前半は、佐藤氏が行った在校生向けと、保護者向けの講演がベースになっており、後半は佐藤氏と杉山校長の対談。

 佐藤氏は講演会に呼ばれてるんだね。宇宙飛行士の若田光一氏や、心臓外科医(天皇陛下の手術を執刀)の天野篤氏がOBとして呼ばれるのは分かるが、佐藤氏は外交官時代、鈴木宗男事件にからんで有罪判決(執行猶予付き)を受けている。どこからかクレームつかなかったのか、「犯罪者を呼んでいいのか」という。

 佐藤氏は、「浦和高校のような地方の伝統校には教育上の深い知恵がいろいろと詰まっているのではないかと思うようになり、機会があれば、自分の経験や意見を一冊の書物にまとめてみたいと考えていた」(「はじめに」より)と、その執筆動機を述べている。
 近年は、私立高校の攻勢が激しく、かつてのような絶対的な存在ではなくなってきたが、たしかに教育課程や授業のあり方、先生と生徒の関係性、学校行事や部活動の位置づけなどには、新興勢力にない魅力がある。(私もOBの端くれだから、ひいき目があるけれど)

 世間に伝わっているのは、東大合格者が減って来たとか、その合格者も浪人ばかりだというような大学進学実績の話(数字で表せる話)ばかりで、そこでどんな教育が行われているかは、あまり知られていない。
 その意味で、浦高に限らず公立伝統校を目指そうという受験生には、一読してもらいたい本だ。

 私は、佐藤氏を著書やマスコミでの論説などで知るのみである。率直に言って、その政治的な主張や分析には同意できない部分も多い。
 だが本書は、その主要テーマが「高校時代の生き方・学び方」、「大学受験」、「卒業後の人生」であることからも分かるように、政治色のほとんどない教育論であるから、学校や塾の先生方にもお勧めできる一冊だ。

 
 



「老人の取扱説明書」とはふざけたタイトルだが

 老人の取扱説明書
 
 ふざけたタイトルだ。
 「老人の取扱説明書」だと。老人をモノと一緒にするんじゃねえ。

 とか言いながら、思わず手に取ってしまうのだよ。編集者、タイトルの付け方うまいね。
 本の売れ行きはタイトル(書名)で決まる。

 タイトルはふざけているが、著者は眼科医で、中身は至極真面目なものだ。
 私はこの本を、77歳の友人に贈ってやろうと思って購入したのだが、その前にざっと目を通しておこうと読み始めると、まあ、出るわ出るわ、自身に思い当たる現象がこれでもかと紹介されているではないか。

 ―老人が都合の悪い話を聞こえないふりをするのは、本当に聞こえてない可能性がある―
 老人になると高い音が聞き取れなくなるそうだ。若い女性の甲高い声がダメなんだって。
 そう言えば最近、彼女らの会話は、ただの雑音にしか聞こえなくなっている。それでいいけど。

 -名前を思い出せないのは、たくさんの人を知っているからだ―
 そうなんだよ。長く生きてると何千、何万という人に会っているから、それでなかなか思い出せないんだ。知り合いが同級生ぐらしかいないガキどもとは違うんだよ。

 -料理に醤油やソースをガボガボかけるのは、塩味に鈍感になっているからだ―
 老人が若者と同じ味覚を感じるためには、若者の12倍ぐらいの塩分が必要なんだって。こりゃ恐ろしい。
 「最近は、薄味が好みになってねえ」なんて言ってるが、実は、薄味に感じっちゃってるだけかもしれない。気をつけよう。

 老人の不可解な行動や、はた迷惑な行動にも、ちゃんとした医学的な理由があるわけだ。

 この本は、取り扱う側である若い人たちの参考書になると思われるが、取り扱われる側であるわれわれ老人にも大いに役立つものである。

 

 
 

AI(人工知能)の弱点は読解力らしいぞ

 AI VS 教科書が読めない子どもたち S

 このところAI(人工知能)に関する本を集中的に読んでいるのだが、その中の一冊に「AI VS.教科書が読めない子どもたち」がある。

 著者の新井紀子氏はNetCommons(ネットコモンズ)の開発者として、すでに教育界ではよく知られた人物だが、最近では人工知能「東ロボくん」の研究開発リーダーとして有名であるから、著書を読んだり、講演を聞いたりした方も多いと思われる。

 新井氏は数学者であるが、大学は一橋大学法学部だ。バリバリの文系。
 が、大学入学後に数学に目覚め、米国イリノイ大学(数学科)に留学し、以後数学者の道を歩んできたという異色の経歴の持ち主だ。

 「東ロボくん」は、国立情報学研究所が中心となり、「ロボットは東大に入れるか」をテーマに人工知能の研究・開発を進めてきたプロジェクトである。

 詳しくは本書に譲るが、「東ロボくん」の偏差値は、順調に上昇し、MARCHレベルなら合格できるところまで到達した。が、その先が進まない。
 「東ロボくん」は、コンピュータ(電子計算機)であるから、計算とか記憶には抜群に強いが、読解力が弱いという致命的欠陥があり、それが克服できない。

 そこで、どうやったら読解力がつくかの研究をするわけだが、その過程で、「日本の中高生の多くは、中学校の教科書の文章を正確に理解できない」という事実が浮かび上がってきたため、研究の中心が、東大合格から中高生の読解力向上に移ってくる。

 前半はAIについての概説で、多少専門用語が出てくるが、高校レベルの数学の知識があれば普通に理解できる。
 後半は、「RST=リーディング・スキル・テスト」の話が中心となるが、その調査結果は、現場で苦労されている先生方の実体験を裏付ける形になっており、共感できる部分も多いのではないか。



 
プロフィール

梅野弘之

Author:梅野弘之
受験生・保護者の皆さん、学校や塾の先生方に最新情報をお届けします。ただし、結構頻繁に受験と無関係の話も。

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