募集で苦戦続く県内私立中学校

 本日は塾の先生方及び私立学校関係者向け情報である。

 まず県内私立中学校の募集状況である。
 下のグラフから分かるように、中学校数の増加にともなって総募集定員が増えている一方、入学者数の増加がそれに追いついていないため、定員を満たせない学校が続出している。
 ※数値は平成29年2月末のデータを使用しているので、その後、変化している可能性がある。浦和ルーテル学院・自由の森学園についてはデータが収集できていない。

 埼玉県私立中学校:定員と入学者推移グラフ


 定員を満たしているのは30校中7校である。
 この状況は、ここ数年変わっていない。

 29年度入試のデータを見てみよう。
1.入学者が定員(学則定員)を上回った中学校
浦和明の星女子
開智
栄東
埼玉栄
淑徳与野
昌平
立教新座 
※50音順

 7校の顔ぶれは、独協埼玉と昌平が入れ替わった以外は前年と同じ。
 昌平は開校8年目で初めて定員を上回った。埼玉栄は、これまでも定員は確保してきたが、今年は120人募集のところ182人と大ブレイクした。

2.入学者が定員の90%以上であった中学校
独協埼玉(98.13%)
本庄東附属(94.17%)
春日部共栄(93.13%)
大宮開成(91.67%)
星野学園(90.00%)
※定員充足率順(入学者÷学則定員)

 実際のところは、定員プラス10%程度を見込んだ募集活動を行ったと推測されるが、定員割れとは言っても、許容できる範囲ではないか。想定している教育活動に大きな支障はないと思われる。

3.入学者が定員の50%以上であった中学校
東京農大三(80.00%)
城北埼玉(73.75%)
本庄第一(66.25%)
西武文理(60.48%)
聖望学園(58.75%)
狭山ヶ丘附属(58.75%)
大妻嵐山(52.50%)
城西川越(50.63%)
※定員充足率順
 
 東京農大三は定員を90人から70人に減じたが届かなかった。城北埼玉は24年度までは定員を上回っていたが、その後減少が続いている。ただ、160人定員で118人入学であるから教育活動そのものへの影響は少なそうだ。西武文理も210人定員で127人であるから同様のことが言えそうだ。本庄第一はまだ2年目であるが、前年の35人から53人と大幅に増えており、定員の80人までもう一息だ。聖望学園はここ3年間やや低迷している。狭山ヶ丘は開校5年目。前年までは80人定員で80%~90%を確保していたが、今年は47人と大幅にダウンした。大妻嵐山は、かつては3ケタの入学者を確保していたが、前々年23人、前年31人と低迷。今年は42人まで回復した。城西川越もかつては3ケタを数えていたが、その後低迷。ただ、前々年61人、前年73人、今年81人と復調の兆しは見える。

4.入学者が定員の50%以下であった中学校
開智未来(45.00%)
浦和実業(42.50%)
西武台新座(37.50%)
秀明(31.25%)
武南(30.00%)
東京成徳大深谷(12.86%)
国際学院(8.75%)
埼玉平成(6.67%)
※定員充足率順

 大学進学ではめざましい成果をあげている開智未来だが、募集では苦戦している。ただし、160人定員で72人入学だから、教育活動自体への影響は最小限にとどまりそうだ。浦和実業は、開校当初は勢いがあったが、この4年間は50人前後と低迷している。開校6年目となる西武台新座は、なかなか50%の壁を超えられない。定員160人の秀明は、今年50人でピーク時の3分の1以下にまで減少している。開校5年目の武南は、ここ3年間20人台で推移している。東京成徳大深谷・国際学院・埼玉平成の3校は、入学者1ケタといずれも過去最低を記録してしまった。学校経営上の問題もさることながら、教育面、とりわけ部活動や学校行事には大きな影響を与えそうだ。

 全体として見れば、開校10年未満の新しい学校が募集で苦戦している。前述したとおり、10年未満で定員を満たしているのは昌平のみである。進学実績が急上昇し、部活動での躍進もめざましい昌平でさえ8年かかっていることを考えれば、新興勢力が既設の学校と戦うことがいかに難しいかが分かるだろう。
 高校入試とは異なり、競争相手は埼玉県内だけにとどまらないという中学入試特有の情況も募集を難しくさせている。

 私の立場としては、特定の学校が定員を満たし募集に成功していればそれでよしというわけにはいかず、すべての学校が募集に成功して欲しいのである。
 そのためには市場の拡大を図らなければならない。既存の受験者を奪い合うだけでは、どこかが増えれば、どこかがそのあおりを食らうことになる。
 市場そのものを拡大すれば、そうしたことは、なくなりはしないが減ってくる。

 中高一貫教育の良さや、私立学校の良さを、もっと知らしめなければならない。

埼玉県内私立中学校入試が始まった

 今日は埼玉県内私立中学校の入試解禁日である。
 入試解禁日は、業界用語だ。
 各県の私学協会が、入試を行ってもいい最初の日を申し合わせていて、これを塾業界などが解禁日と呼んでいる。

 これがないと、どこの学校も少しでも早く生徒を確保したいと思うから、入試日が年内、秋、夏と、どんどん早まる可能性がある。

 東京と神奈川は2月1日から。埼玉は1月10日から。
 この3週間の違いが、どういう現象をもたらすかというと、東京や神奈川の生徒が、本番に向けての予行演習として、大挙して埼玉の学校を受けに来る。「お試し受験」などとも言われる。

 というわけで、今日から始まった埼玉県内私立中学校の入試は、本気の受験生と、練習に来ている受験生が入り混じって受けているのである。

 私は、埼玉栄中学校の入試を見に行ったのだが、グループ校である栄東中学校の一部の入試は、ここが会場になっている。受験者が多すぎて、本校だけでは実施できないという事情もある。

 前を歩く親子連れの会話。
 子「お父さん、駅前に畑があるんだね」
 父「本当だ。見たことない景色だ」
 おいおい、どこから来たんだよ。埼玉じゃ当たり前の光景だぜ。
 こういう都会なんだか田舎なんだかよく分からない姿が、埼玉っぽくていいんだよ。6年通えば分かると思うよ。

 さあ、県内私立高校入試解禁日まであと12日だ。

 埼玉栄中学校入試(大宮駅)
 大宮駅・埼京線ホーム。一番空いている場所でもこんな感じ。

 埼玉栄中学校入試(西大宮駅)
 西大宮駅。改札を抜けるのも一苦労。

 埼玉栄中学校入試(激励) 
 正門付近。両サイドで受験生を迎えるのは、塾の先生たち。

 埼玉栄中学校入試(校長挨拶)
 保護者控室(食堂)で挨拶する校長先生。





28年度埼玉県私立中学校の入試を考えてみた

 中学入試に関わる話なので、興味のない方はスルーしていただきたい。

 埼玉県には48校の私立学校があり、このうち30校(62.5%)に併設中学校がある。
 今春(28年度入試)の総募集人員は3773人。これに対し、総入学予定者は3031人であるから、定員充足率(=入学予定者数÷募集人員)は、80.3%である。
 つまり、全体としては募集人員を満たしていない。

●募集人員を満たしているのは、30校中7校である
 これら7校は、26年度~28年度の3年間連続で100%を超えているので、安定した募集が行なわれていると言えるだろう。
 28年度埼玉中学入試01

●充足率50%以下の学校は、30校中9校である
 中学校の入学者が少なくても、高校募集で埋め合わせすればいい。
 だが、中学校の募集コスト及び入学後の教育コストは、非常に高くつくわけであるから、学校経営に少なからぬ影響を及ぼすだろう。
 入学者が少ない場合の大きな問題点は、授業や部活動、学校行事などへの支障である。
 英語や数学などは少人数できめ細かな指導ができるというメリットがあるが、体育などは種目が限られるだろう。部活動では、多くの部が、大会に参加できるくらいの人数を確保するのが難しくなるだろう。学校行事も盛り上がりに欠けそうだ。
 28年度埼玉中学入試02

●入学者が100人を超える学校は、30校中13校である
 あまりにも人数が少ないと平常の教育活動にも何かと支障が生ずるのではないかという考えの下、充足率に関係なく、入学者数順に並べてみたのが次の表である。
 募集人員を満たした7校に加え、星野学園・城北埼玉・春日部共栄・本庄東附属・西武文理・大宮開成の6校が100人を超えている。
 100人には届かないが、昌平や狭山ヶ丘などは、もともと募集人員が80人であって、この人数なら少人数のメリットの方が大きいという判断だろうから、73人とか71人というのは、教育活動面ではそれほど問題にはならないだろう。
 28年度埼玉中学入試03

●志願者全体の4分の1を集める栄東
 28年度の志願者合計は約4万3千人であった。このうち入学者は3千人である。
 この、あまりにも大きな差は何なのか。
 県内私立高校の場合でみると、志願者合計約6万8千人に対し、入学予定者1万9千人であるから、3.5倍ほどの開きでしかない。だが、中学校の場合、14倍ほどの開きがある。
 これは、複数校、複数回の受験が当たり前な中学受験独特のシステムにもよるが、他都県に比べ入試日が早い埼玉に、いわゆる「お試し」として県外受験生が流入してきているという事情によるものだ。
 栄東の場合、志願者数は1万290人で、これは県全体の志願者数の23.8%に当たる。一つの学校で全体の4分の1近くを集めているのである。
 首都圏全体で見ても、今やトップレベルにある栄東に、東京や神奈川の難関校狙いの受験生が、予行演習として受けにくるから、このような驚きの数字となる。

※志願者数・入学予定者数などは、最終確定データではないので、今後発表されるデータと誤差があると思われる。