埼玉県公立入試、追試は有利にはならない

 昨日からの続きである。

 追試は、本試験とまったく異なる問題で実施されることになるだろう。同一問題や類似問題はあり得ない。
 しかし、厄介なのは、異なる問題でありながら、難易度はそろえなければならないということだ。これは相当に難しいことだ。
 県当局には、最大限努力していただきたいとお願いするしかない。

 追試を受ける受験生は、事前に本試験の問題を知ることになる。本試験に出た問題が追試に再び出れば有利である。また、本試験に出た問題は、おそらく追試には出ないと予想されるので、それを知って臨める点も有利である。

 だが一方、このように考えることもできる。
 本試験の問題は自分の得意な問題であり、合格点が取れたかもしれないが、追試では自分の苦手な問題が出るかもしれない。そういう不安もある。
 追試は有利なだけではない。

 本試験から追試までは、中4日である。
 インフルエンザで高熱を発し、メシも食えず、夜も寝られず、もちろん勉強なんてまったく手につかなかった生徒が、いくら若いとはいえ、3日や4日で万全のコンディションに回復できるだろうか。
 そう考えれば、追試は有利とばかりは言えない。

 不公平を口にするのは、主に本試験で不合格になった受験生だろう。自分より力が劣ると思っていた友達が、追試を受けて合格した場合である。これはちょっと納得行かないが、追試で受かった方だって、何となく肩身が狭い思いをするかもしれない。

 ということで、まとめて言えば、制度として存在するのは悪いことではないが、できるだけ、そのお世話にならないほうがいい。


 私は、入試は教育に深く関わるが教育そのものではないので、制度はできるだけシンプルにしたほうがいいと主張してきた。厳密性や客観性や公平性はどこまで追求しても切りがないから、どこかでスパッと線を引いたほうがいいという考え方だ。
 だから、追試にも積極的には賛成しないのだが、世の中の雰囲気や人々の考え方の変化というものがある。

 追試対象者が爆発的に増え、かつ、かれらが全員合格というような事態にでもなれば、考え直さなくてはいけないだろうが、追試は入試のシステムを根幹から変えるほどの取り組みでもないと思うので、まずはやってみようじゃないかということでいいのではないか。

埼玉県公立入試、2019年度から追試を導入

 早くも再来年(2019年度)の埼玉県公立入試日程が発表された。
 現中2が受ける試験だ。
 学力検査は2月28日(木)、実技・面接が3月1日(金)、合格発表が3月8日(金)、このあたりまでは例年通り。学力検査が2月になったのは、単に曜日の巡り合わせによる。

 目を引くのは、「急病等やむを得ない事情により、学力検査を受検できなかった志願者に配慮し追検査を新たに実施する」とされている点だ。追検査は3月5日(火)で、合格発表は本検査と同時に行われる。

 追試の件が、注目され始めたのは昨年のことである。それ以前から実施していた自治体もあるが、埼玉県などは実施していなかった。

※面倒な人は、以下はスルーしてください。
平成28年3月9日、衆議院文部科学委員会において、次のような質疑があった。(ソースは衆議院の議事録である)

浮島智子議員(公明党)「(前略)神奈川県の相模原市で、2月の18日、インフルエンザで体調を崩した学生(筆者注:中学生は「学生」ではなく「生徒」と呼ぶのが正しい)がそのまま高校受験をされました。そして、そこで十分に力を発揮することができず、落ち込んでしまったその学生は、家に帰ってきて命を絶ってしまいました。そして、その後、お母様も後を追って命を絶ってしまったという事件が起こってしまいました。そこで、まず高等教育局長にお伺いをさせていただきたいと思います。例えば大学の入試センター試験では、受験生の受験日直前にインフルエンザに罹患した場合、どのような対応をとられるのか、お伺いさせていただきたいと思います」
常盤政府参考人「大学入試センター試験におきましては、インフルエンザ等を含む病気や負傷により試験を受験できない者などに対して、本試験とは別日程、原則といたしましては本試験翌週の土日で追試験を実施しているところでございます。(後略)」
浮島智子議員「(前略)今回の件は、もし高校受験でも追試験が認められていたら防げたのではないかと私は思っております。そこで、今回の件のように、高校受験において受験生が試験の直前にインフルエンザに罹患した場合は一般的にどのような対応になっているのか、また、実際にインフルエンザに罹患して別室で受験を受けた受験生はどのくらいいるのか、局長にお伺いをさせていただきたいと思います」
小松政府参考人(筆者注:小松親次郎・現文部科学審議官。当時は初等中等教育局長。氏の配偶者が小松弥生・現埼玉県教育長)「高等学校の入学者選抜に関する実施方法等につきましては、都道府県教育委員会等の実施者がそれぞれの判断で決定することになります。そういった中で、都道府県教育委員会等によるインフルエンザに罹患した生徒への対応について、詳細なところまでは把握できておりませんけれども、私どもが都道府県等から伺っているところ、把握しているところを申し上げますと、お尋ねのように、まず一般的に、全ての都道府県において本人の申し出による別室受験は実施されております。それから、都道府県の中には、追試験を行う、あるいは前期、後期に別日程で複数受験機会を確保するといったような取り組みが行われているということでございまして、実施者の判断において受験機会の確保に努めていただいているものというふうに承知をしております。なお、各都道府県において具体的に別室受験等を行った人数等については、申しわけございませんが、把握できておりません」
浮島智子議員「そこで、馳大臣にお伺いさせていただきたいと思いますけれども、今御答弁ありました、把握ができていない。高校受験は都道府県の教育委員会が行うことであるため、文科省としては一律に仕組みをつくって整備をしていくということは難しい側面もあると思います。でも、まず各教育委員会の実態を把握し、直前にインフルエンザに罹患した受験生の特別措置のあり方について関係者や有識者で検討すべきだと思いますけれども、御見解をお伺いさせていただきたいと思います」
馳浩文部科学大臣「検討いたします」
浮島智子議員「ぜひとも検討していただき、そして、このようなことが二度とないようにしていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。(後略)」
※面倒な人は、以上をスルーしたと思います。それで結構。


 文科省は国会での質疑を受けて、28年5月~6月、公立高校入試がある66都道府県市を調査した。
 別室受験は64都道府県市が実施しており、昨年入試では約2700人が別室受験した。別日程で追試を行ったのは11府県市で、昨春入試では124人がインフルエンザを理由に追試を受けた。

 文科省はその後、各都道府県市の教育委員会に対し、28年10月の通知で、すでに追試を実施している自治体の例を参考に、インフルエンザに罹患した生徒の受験機会を確保するように要請した。
 ただ、これは時期が時期なので、急な対応は難しかったと考えられる。
 
 国会でのやりとりにもあるように、高校入試の日程や実施方法については、都道府県等の教育委員会が決めるべきものなので、文科省の命令で一律に実施させることはできない。だから、「通知」という形をとっている。「通知」は「お知らせ」である。

 が、「通知」という形であっても、文科省の意向なのであるから無視するのは難しい。加えて、世の中の風潮というものがある。
 埼玉県教育委員会としても、文科省の意向や世の中の風潮に忖度し、今回の決定に至ったものと思われる。

 追試を行っていなかった自治体は、次のような理由をあげていた。
 「日程的な余裕がなく実施が困難」が43%で最多。「試験当日の別室受験で受験機会が確保できる」と、「本検査と追試の難易度に違いが生じ、公平性の確保が難しい」がそれぞれ22%だった。

 日程はたしかにきつくなる。
 追試該当者が出た学校では、一方で採点・集計作業を進めながら、もう一方で追試を実施することになる。
ただ、追試該当者はそれほど多くないと予想されるので、それに割く人員も限られるから、何とかなりそうだ。

 本試験と追試験の難易度に差が出る。
 受験生側の関心は主にここにあるだろう。
 インフルエンザに罹患してもチャンスが与えられるのは朗報だが、異なる問題で合否を決めることに対しては、不公平感がぬぐえないだろう。

 この点について私は、大局的に見れば、それほど大きな問題にはならないだろうと見ているのだが、長くなったので、続きは明日にする。

英検は高校入試でどのように評価されるか

 本日2本目。
 実用英語技能検定(英検)と高校入試の関係。

 受験生・保護者から、英検を取得していないと不利になるかという質問をよく受ける。
 答えはビミョーっていうやつだ。
 たしかに一定の級を取っていれば得点化されるから、取っていれば有利、取っていなければ不利となるが、合否を決定的に左右するほどのものかというと、それほどでもない。ほとんど影響はないと言ってもいい。
 合否を決定的に左右するのは、5教科の学力検査であり、調査書の中の学習の記録の評点(いわゆる内申点)である。

 だから、当面の高校入試対策としてはさほど意味を持たないが、高校入学後やその先の大学受験や就職試験まで考えれば、一つ一つ級を上げて行くのは意味のあることだというのが私の見解だ。

 30年度埼玉県公立入試の選抜基準を見ると、どこの学校でも英検などの資格取得に対して得点を与えるようになっている。ただし、繰り返しになるが、合否を決定的に左右するほどではない。

 一番厳しい基準を設けているのが、浦和・大宮(普通・理数)・春日部・川越女子の4校5学科で、英検2級以上を評価するとなっている。
 英検2級は主に高校生が受験しており、その合格率も25%程度であるから、中学生で2級を取っている人は、きわめて少ない。と言うことは、ここで得点できる人はほとんどいないということであり、差はつかない。

 準2級になると、やはり高校生が多いが、中学生もだいぶ増えてくる。
 準2級以上を評価するのは、浦和一女・浦和西・川口北・川越・熊谷・熊谷女子・熊谷西(普通・理数)・越ヶ谷・越谷北(普通・理数)・所沢・所沢北(普通・理数)・不動岡(普通・外国語)・和光国際(普通・外国語)・蕨(普通・外国語)・市立浦和。以上は、学校選択問題の採用校。いわゆる上位校だ。
 学校選択問題採用校の中では、川越南だけが「内容により得点を与える」となっており、級については特に何も言っていない。
 
 それ以外で、準2級以上となっているのは、朝霞・春日部女子(普通・外国語)・所沢西・本庄・松山(普通・理数)・松山女子・浦和南・大宮北(普通・理数)である。
 学校選択問題採用校に近いレベルの浦和南・大宮北あたりがギリギリの線だろう。

 朝霞・本庄・所沢西・松山女子が準2級以上というなら、春日部東・伊奈学園・坂戸・浦和北・与野・越谷南・大宮光陵(普通)・上尾(普通)・川口市立あたりも準2級以上でいいような気もするが、それぞれの学校が過去の実績等に基づき熟慮された結果であるから、部外者がいちいち口をはさむことでもないだろう。

 評価する(得点化する)ことは分かっているが、何級以上なのかについて触れていない学校が、先の川越南を含め24校ある。できれば具体的に示してあげたほうが親切ではないかと思う。

 4級や5級以上でも評価される学校が普通科で20校ある。学力検査得点が4割、3割以下という学校が主だが、努力の結果を少しでも拾ってあげようという考えはいいだろう。

 蓮田松韻と児玉は、ただ単に「資格取得」と書いてあるだけで、英検なのか漢検や数検なのか、あるいはまた珠算や柔道・剣道や囲碁将棋の段位なのかまったく分からない。級や段位を指定しないとしても、もう少し別の表現があるんじゃないかと感じた。

 以上、英検と入試に関するレポートであった。

完全無欠な選抜方法は存在しない

 人にはさまざまな能力がある。歌がうまいのも能力、絵が上手なのも能力、早く走れるのも能力。能力とは学力だけではないのだ。
 そこで、入学試験においても、学力以外の多様な能力を評価しようではないかという考え方が出てくる。

 面接や作文・小論文、討論(ディスカッション)、ディベート、発表(プレゼンテーション)、実技。こういったものを選抜の材料として加えて行けば、学力試験(ペーパーテスト)では分からない、さまざまな能力が見えてくるだろう。

 だが、これをやると入試はどんどん複雑で分かりにくいものになって行く。実施する側も、受ける側も、負担は増大するだろう。そして、おそらく評価者の主観が入り込む可能性が高まるだろう。
 「なぜ、あの子が受かって、うちの子が落ちたんだ」という不満が出やすいのは、こちらのタイプの入試である。

 多様な能力評価と対極にあるのが、学力試験(ペーパーテスト)一本の入試だ。点数の高い順ということにしてしまえば、単純で分かりやすいし、主観が入り込む可能性はきわめて低い。
 しかし、これだと生徒の能力を多面的に見ることができない。また、現実問題として学力試験の対象にならない教科がないがしろにされる恐れがある。

 結局のところ、どこからも、誰からも文句の出ない入試方法などないのだから、学力試験一本と、多様な能力評価の間のどこかに、「落としどころ」を見つけるしかない。

 受験生や保護者、また中学校や塾の先生方も、完全無欠な入試方法など存在しないことは先刻承知である。
 ただ、ルールは事前に、明快に、示してほしいと思っている。

 私が現役で教員をやっていた時代に比べれば、入試に関わる情報公開は、はるかに進んでいるが、まだまだ改善の余地は残っている。

幕張総合高校は、基本今までどおりでいい

 千葉県立幕張総合高校の入試選抜の方法について、不公平ではないか、ないしは不明朗ではないかという論調のニュースが流れていた。
 幕張総合高校は、埼玉県で言うと伊奈学園総合と常盤(ときわ)を一緒にしたような学校だ。1学年定員720人の普通科と5年生の看護科を擁する。

 千葉県の公立入試は前期、後期の2回制だが、募集人数の割り振りは前期の方が多いので、どちらかというと前期メインの入試となっている。
 前期選抜は、2日間で行われる。1日目は5教科の学力検査。2日目は各校が面接、作文、自己表現、適性検査、学校独自問題などから1つ以上の検査を選んで実施する。合否は、これら検査結果と調査書を合わせて総合的に判定される。

 問題になったのは、同校前期選抜の自己表現だ。
 自己表現とは分かりにくいが、大きく2つあって、一つは口頭での自己アピール、もう一つは「テニスによる自己表現」とか「サッカーによる自己表現」など、早い話が実技の検査だ。
 同じ自己表現でも、口頭での自己アピールだとA評価(評価はA,B,Cの3段階)はほとんどつかないが、実技の方だと大量にAがつく。しかも、Aをつける人数などを部活顧問間で事前調整していたのではないかという話もあり、今回一部マスコミが問題化したのである。


 さて、私の結論。
 「何を今さら」。

 これは一種の「スポーツ推薦」だ(文化部もあるが)。
 720人もとる学校なんだから、上から下まで学力検査の1点、2点の違いでとるんじゃなく、3分の2は学力検査重視、残り3分の1は部活動重視、そんな選抜をしたっていいじゃないか。県千葉みたいなバリバリの進学校じゃそうも行かんだろうが、中堅進学校というくらいの位置づけなわけだし、かえって特色が出ていい。
 実際、今までもそうしてきて、それで学校の評判が落ちたかというと、そんなこともないわけだから、方針としては今までどおりでいい。

 ただ、基準というか、選抜方法については、もう少し明確に示したほうがいいかもしれない。問題があるとすればそこのところだ。

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梅野弘之

Author:梅野弘之
受験生・保護者の皆さん、学校や塾の先生方に最新情報をお届けします。ただし、結構頻繁に受験と無関係の話も。

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