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安倍「大勝」ではなく石破「善戦」と言いたい人々

 自民党総裁選の報道のされ方。

 まず安倍候補、石破候補の得票率を両候補が共に立候補した平成24年選挙と今回の平成30年選挙とで比較してみる。 

 24年度選挙では地方票においては石破候補が安倍候補を上回っていたが、30年選挙では安倍候補が逆転した。
 20180921総裁選地方票

 24年選挙では議員票において安倍候補(55%)が石破候補(45%)をやや上回っていたが、30年選挙では安倍候補(82%)が石破候補(18%)を大きく上回った。
 20180921総裁選議員票

 以上のデータから、24年選挙は安倍候補の側から見れば「辛勝」だった。石破候補の側からは「惜敗」である
 一方今回の30年選挙は、まとめて言えば安倍候補の「完勝」「大勝」または「圧勝」であり、石破候補の「完敗」「大敗」または「惨敗」である

 だが、一部新聞・テレビは、安倍の勝利と伝えることを好まなかった。石破の敗北と伝えることも。
 そこで、さすがに「接戦」ははばかられたとみえて「善戦」と伝えた。
 前回は勝ってたかもしれなかった石破候補が、これだけ引き離されたのに「善戦=よくやった」はないだろうと思うが、これが現在の一部マスコミ報道だ。

 今後のためによく覚えておこう。
 ダブルスコア以上で勝っても、「完勝」「大勝」「圧勝」じゃないんだな。

「人類初」って、アホな見出しだが気持ちは分かる

 マラソンのキプチョゲ選手(ケニア)が、ベルリンマラソンで2時間1分39秒の世界新記録で優勝。
 多少でもマラソンに興味がある人だったら、キプチョゲ選手が現役最強ランナーであることも、ベルリンが記録の出やすい超高速コースであることもご存知だろう。
 キプチョゲ選手のそれまでの自己最高が2時間3分5秒。ベルリンマラソンの過去10年の優勝タイムは2時間2分台が1回、3分台が5回、4分台が2回だから、マラソン11戦10勝のキプチョゲ選手が好タイムで優勝することはある程度予想できた。
 が、それにしてもすごい。

 ネットでこのニュースを拾ってみる。
 「ベルリンマラソンで驚異の世界記録 2時間1分台」(テレ朝NEWS)
 まあ、このあたりが標準的な見出しか。

 「キプチョゲが人類初の2時間1分台の世界記録樹立」(日刊スポーツ)
 おいおい、「人類初」って何だよ。
 ウマやダチョウやラクダはすでに2時間1分台を出しているけど、人類では初、ってそういうことか? じゃあウマのマラソン世界記録も記事に書いといてくれよ。
 と、スポーツ紙の見出しにいちいち突っ込んでも仕方ないが、「人類初」は、ほかでも結構目にする。

 ここから少し真面目な話になるけど、ポイントは「初」にあるんだよ。
 史上初でも世界初でもいいんだが、何かもっとインパクト出せないかな。そうだ人類初で行こう。そういう話。
 マスコミは刺激的な見出しをつけたがる。そうしないと目にとめ、読んでもらえないから。

 中でも「初」はもっとも重視される。
 「初」はニュースになりやすく、大きく扱われやすい。
 ほかには、最高・最大・最強・最多・最新などの最上級。

 学校の広報担当者が、新聞やテレビに取材に来てもらうためにプレスリリースを出したりするでしょう。学校行事やなんかの。私のところにも時々来る。
 その時、「毎年恒例の」じゃダメなんですよ。じゃあ来年にするか、ってなっちゃう。「今年が初めて」とか「これが最後」じゃないと、行って取材する意味がない。

 世界初や日本初。これはかなりハードルが高い。
 でも、高校では初めて、公立(私立)では初めて、埼玉県の高校では初めて、普通科では初めて、地域では初めてという具合に範囲を狭めて行けば、「初」になるかもしれない。最高や最大、最多なども同じこと。

 校内配布用の文書に毛の生えた程度のリリースではマスコミは動きませんよ。事件・事故・スキャンダルなら来るなと言っても来るけど、学校にとってプラスになる記事やニュースを流してもらいたかったら、マスコミへの知らせ方は考えたほうがいい。どこに食いついて来るかということを。

「抹茶アイス食べたか?」って、何だよその質問

 大坂なおみは、「大阪」ではなく「大坂」である。

 地名としての大坂が大阪となったのは明治以降であるようだ。坂が阪となったのは、土編は土が付くにつながり縁起が悪いからとか、坂は転がり落ちるにつながり縁起が悪いからとか諸説あるようだが、どっちでもいい。

 大坂なおみ選手の帰国後記者会見の話である。
 「抹茶アイス食べましたか?」とか、テニスとは関係ない下らない質問が多かった。
 一つには記者たちの勉強不足がある。
 たぶん、試合もちゃんと見ていない。昨日は別の芸能人の取材をしていたとか、体操のスキャンダルを追っかけていたとかいう事情もあるだろう。テニスばかり勉強しているわけに行かないのだ。

 下らない質問になるもう一つは、テレビ視聴者の側にある。テニスの専門的な話より、選手のプライベートに興味がある人が多い。だから記者はそこに合わせて質問している。技術的な話や戦術的な話は、専門雑誌や専門チャンネルでやればいいじゃないかというのも、一つの考え方だ。

 現在、テニスの試合会場に足を運ぶのは、ほとんどがテニス愛好者や経験者だろう。
 ところが、サッカーや野球になると、一度もボールを蹴ったことがない人や、一度もバットを振ったことがない人も、試合会場に足を運んでいる。また、監督やコーチにでもなったつもりで、「あそこは右に展開だろう」とか「なんであの球見逃すんだ」とか、自分じゃ出来もしないことを熱く語る人々がわんさかいる。人気スポーツというものは、そういう広範なファンに支えられている。

 純粋なアマチュアスポーツならば、好きな人だけやっていればいいが、大坂選手がやっているのはファンあってのプロスポーツだ。
 息の長いファンを獲得することはテニス界のためでもあるし、マスコミのためでもある。そう考えると、「抹茶アイス食べましたか?」などは、してもいいけど、なくてもいい質問だ。
 もっと、テニスの魅力を伝えるような質問はなかったの?

 こんなことを言うのは、私も取材者としてインタビューや質問をする立場だからだ。
 どうでもいい下らない質問をしていないか。取材対象者が一番言いたいことを聞けているか。視聴者や読者にとって役に立つ情報を引き出しているか。
 というわけなので、いつも取材者側の態度や質問内容が気になるのである。

鹿児島中3自殺、「担任の指導直後」は悪意に満ちた報道

 今日はもう1本行きます。

 一昨日、鹿児島で中3男子が自殺した。
 今日(9月5日)の新聞各紙デジタル版の見出しを拾ってみた。
 
担任の指導直後、中3男子が自殺 夏休みの宿題提出促す」(朝日新聞)
「自殺 中3男子、帰宅し 2学期初日、担任指導後 鹿児島」(毎日新聞)
「中3男子が始業式後に自宅で自殺 進路に不安か 鹿児島」(産経新聞)
「宿題提出せず個別指導、始業式後に中3男子自殺」(読売新聞)

 どうです?
 朝日の「担任の指導直後」、毎日の「担任指導後」はひどいでしょう。これじゃまるで、担任が自殺に追い込んだみたいじゃないですか。まだ原因も何も分かってないのに。

 朝日によると、「夏休みの宿題が未提出だったので、放課後の午後1時すぎごろ、職員室で女性教諭から約10分にわたって宿題を提出するよう個別に指導を受けた」
 そりゃ指導するでしょう。
 でも10分。
 普通の教員感覚で考えたら、時間的に考えてそんなに厳しい指導じゃない。中3なわけだし、その際、進路とからめて指導するのも当然のこと。

 「同僚の教諭らが生徒が涙を流す様子を確認しているという」。厳しい指導が自殺に結び付いたとでも言いたげだね。この部分、産経では「夏休み中に体験入学した高校の環境に不安を抱いたと明かし、涙を流したという」となっているよ。

 で、「母親が午後6時ごろ、自宅2階で自殺している生徒を発見した」
 指導を受けたのが午後1時すぎごろ。自宅で自殺しているのを発見されたのが午後6時ごろ。
 指導を受けて、その後教室に戻って窓から飛び降りたというのであれば指導直後だけど、こういうの、指導直後っていうのかね。

 宿題を出さなかった程度のことで、厳しすぎる指導をして、それで生徒が自殺に追い込まれた。そういうストーリー。

 まあ、産経の「夏休み中に体験入学した高校の環境に不安を抱いたと明かし、涙を流したという」が事実とすれば、担任や周りの先生が、ここのところもう少しフォローしていれば防げたかもしれないという悔いも残るが、原因がはっきりしないうちに、あたかも担任の責任だみたいな、そういう印象を与えるような報道は止めてほしいものだ。

 以前にも書いたと思うが、夏休み明けは慎重運転が求められるんですよ。ある程度経験を持った先生はそのことをみんな分かっているはず。
 なんだが、夏休みから平常の学校生活への復帰は、生徒によってはかなり高いハードルだったりもするし、加えて中3には進路の悩みもあるわけだから、慎重の上にも慎重を期して指導に当たってもらいたいと思います。

大人げない報道から生徒を守らなければいけない

 今日は本題に入る前にお詫びと訂正をしておきますね。

 一昨日のトイレの件で読者の方から「一女のトイレは綺麗です」とのご指摘がありました。校長先生との会話の中で、「冷房もトイレもまだまだ課題が多い」という話になって、そこからあの内容になったのですが、正確な洋式化率を聞いたわけではないので、「一女はまだトイレが和式なんだってね」の部分は取り消します。私自身、全部和式だと思っているわけではありませんが、「正しい情報を提供せよ」とのご意見はその通りですので、注意したいと思います。
 私が強調したかったのは、エアコンも大事だがトイレも忘れるなということです。現在、県立学校の洋式化率は棟ベースで38%です。以前は100%達成目標を平成43年度までとしていたものを36年度に前倒しするなど県も努力しています。今年度も「トイレ改修加速化事業」として5億8781万円の予算が計上されており13校13棟の洋式化が進みます。大規模改修、耐震化、エアコン設置、バリアフリー化など課題山積なのは承知していますが、トイレもよろしくと改めて言っておきます。

 では今日の本題。

 「大阪桐蔭ゴルフ部員が賭けゴルフ」というニュースを発見。
 全国に流すようなニュースかと思うが、とりあえず中身を確認してみよう。

 「大阪府大東市の大阪桐蔭高校のゴルフ部で、男子部員同士が賭けゴルフをしたり、上級生が下級生に暴力をふるったりしていたことがわかった。
 大阪府教育庁私学課によると、2017年7月から今年3月までの間、複数の男子部員が練習中、1回数百円ずつを賭けて複数回プレーしていた。また、この間に、上級生が繰り返し下級生の肩を殴る「肩パン」などの暴力を振るっていた。暴力を振るわれた部員にけがはなかった。同校が3月に部員に聞き取りをして発覚。顧問や部員を注意、指導し、私学課にも経緯を報告したという。」(朝日新聞デジタルより)

 学校内における小さな事件である。
 が、小さくても事実が発覚したら学校は放ってはおかない。少額であっても現金のやり取りがあり、加えて暴力行為もあったとなれば、顧問・監督レベルでは済まされず、生徒指導部案件となり、何らかの指導が行われるだろう。
 記事を読む限りでは、反省文を書かせるとか、親も呼んで注意するとか、部活を一定期間休止させるとか、学校によって考え方は異なるだろうが、だいたいこんなものだろう。要は生徒が反省して二度としなければいいわけだ。

 が、こんな小さな事件でも、事が大阪桐蔭となれば大きなニュースになる。
 特にWEBサイトのニュースでは、みんなが興味を持って読んでくれる題材を取り上げないとPV(ページビュー)が増えず、広告売り上げにも響いてくるので、「重要性」よりも「話題性」が重視される。

 学校や先生からすれば、「なぜこんな小さなことを」だろうが、マスコミ側からすれば「こんなにおいしいネタはない」わけで、世間にもそれを面白がる人が大勢いる。と言うか、そういう人がいるから、そういうネタを拾ってくるのだから、マスコミばかりを責められない。

 当該部員たちは、先生から指導を受ける。叱責される。おそらく何らかの懲戒処分を受ける(すでに受けたか?)。そこまでは当然だ。
 だが、世間の人々を傷つけたり、世間に迷惑をかけたりしたわけではないから、見ず知らずの世間の人々から責められる理由はない。つまらんことを仕出かした連中だが、その部分では守ってやらなければならない。先生も大変だ。

プロフィール

梅野弘之

Author:梅野弘之
受験生・保護者の皆さん、学校や塾の先生方に最新情報をお届けします。ただし、結構頻繁に受験と無関係の話も。

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