FC2ブログ

40年前の大手塾では、何をどう教えていたか

 佐藤優「先生と私」 (幻冬舎文庫・650円+税)

 佐藤優(さとう・まさる)氏は、元外交官で、現在は作家・評論家として活躍している。氏の言説には、賛成しかねる点も多いのだが、作家がどんな思想を持ち、どんな発言をしようと自由だ。
 気に入らなきゃ、読んだり、見たり聞いたりしなければいいだけの話だ。

 佐藤氏は県立浦和高校の出身である。調べてみたら、私より8年下だった。
 私は、教育実習を母校の浦高でやっていて、その時の3年生という計算になるから、どこかにいたということだ。まあ、どうでもいいが。

 佐藤氏の著作では、「国家の罠~外務省のラスプーチンと呼ばれて~」(新潮文庫)を読んだことがある。「獄中記」(岩波現代文庫)も読んだはずだが、内容はよく覚えていない。

 「先生と私」を読んだのは、パラパラとページをめくってみたら、植竹中学校とか、浦高・一女とか、山田義塾とか、よく知る名前が結構登場していたからだ。

 山田義塾というのは、大手塾チェーンの走りのような会社で、創業は1966年と栄光ゼミナールやスクール21などよりずっと古く、一時は首都圏に50教室以上を展開し、塾生も2万数千名を数えたというが、内紛が相次いだこともあり、いまは存在しない。

 本書では、その山田義塾の先生と、佐藤少年との交流が、仔細に描かれているが、これが、今ではちょっと想像できないくらい濃密であり、指導内容も高校受験塾とは思えないほど高度なものなのだ。

 たとえば、塾の先生が授業中にこんな説明をする。
 「文章は、内容を変えずに、伸ばしたり、縮めたりすることができる。短くすることを要約といい、長くする方を敷衍という。要約は、少し訓練を積めば、誰にでもできるようになるが、敷衍は難しい。いろいろな背景知識や、比較する他の文学の例を知らないとできません。高校入試問題でも『要約せよ』という問題はたくさん出るけれども、『敷衍せよ』という問題は出ない。しかし、大学生になったり、社会に出てから、物事を敷衍する力はとても重要になります」(本書73頁:第三章山田義塾より)

 本ブログの読者の中には、塾の先生もおられると思うが、塾産業の黎明期である1970年代後半から1980年代初頭の塾とはどんなものだったかを知るには、絶好のテキストになるかもしれない。
 もちろん、佐藤少年は少し変わった子だったようなので、その点を割り引きながら読まなくてはいけないが、「塾とは何なのか」ということを、改めて考えさせられた一冊であった。

 
 

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

梅野弘之

Author:梅野弘之
受験生・保護者の皆さん、学校や塾の先生方に最新情報をお届けします。ただし、結構頻繁に受験と無関係の話も。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
当ブログを訪問された方
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード