「単願」に潜む危険性

 志望校調査。
 先生的に言うと、この種の調査は、生徒の受験への動機づけとして結構効き目がある。これを機に急に勉強を始めるというほどではないが、「ちょっとは真面目に考えなきゃいけないよな」というぐらいの気持ちにはなるものだ。

 埼玉県ではこの時期、全県的な志望校調査が実施される。(10月1日現在調査)として結果が公表されるのは11月の初めだ。当然倍率も出るわけで、受験生の心はわさわさと揺り動かされ、「さあ頑張らなきゃ派」と「もういいや派」とに分かれて行くのである。

 私立高校の場合、推薦入試があり、その中に「単願(たんがん)」という制度を組み込んでいることが多い。一校だけに願書を出すから「単願」。
 何とかしてよとお願いするのは「嘆願」。

 制度・仕組みがある以上、それを利用するのは悪いことではない。通常は、「併願」より合格基準が下げられているから、ワンランク上の学校に入れるかもしれない。

 ただ問題点もある。
 埼玉の私立高校では、事実上の合格内定をかなり早い段階で出していることが多い。世にいう「確約」である。もちろん試験の出来が極端に悪ければ、落とされるわけだが、まあレアケースである。

 「単願」を選択すると、公立は受けないということであるから、3月を待たず、来年1月中旬で受験は終了する。さらに言えば「単願」の「確約」があれば、気持ちの上では年内に受験は終了する。
 問題はここだ。

 一方に、3月の公立受験を目指し、これから本気になって勉強する生徒がいる。本番が近づくにつれ、多くの受験生は、「今までこんなに勉強したことはない」と感じることだろう。ところが、「単願」で「確約」を取ってしまった生徒は、どこか気の抜けた勉強になる。

 両者の差は、来年4月の高校入学後にはっきり現れる。
 しばしば高校の先生が、「こんな出来ない子をとったつもりはないんだが」と頭をかかえているが、「出来ない子をとった」のではなく、「とった子が出来なくなった」のである。

 前述したように、「単願」の仕組みは活用していいが、そこに潜む危険性を強く自覚しなければならない。
 私立高校側も、「単願」の生徒の学力が下がらないように、いろいろ工夫をこらしているが、入学前の指導には限界がある。
 私は、ここにも塾の先生方の出番があると思うが、いかがなものだろう。

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