最後のホームルーム

 卒業式を終えて、最後のホームルーム

 卒業式は、まあまあ良かったんじゃないか。受けもしない演技をするやつもいなかったしな。
 さてと、これが最後のホームルームだから、ひとこと言っておこう。まあ、贈る言葉っていうやつだ。何を言ったってどうせすぐ忘れるに決まってるが、それでも懲りずに言い続けるのが教員だ。

 「二度と学校に来るんじゃない」
 言いたいのはこのひとことだ。
 
 明日からこの学校は「うちらの学校」じゃないぞ。この教室も、今座っている机やイスも、今日を最後にお前たちのものじゃなくなるんだ。下級生や、もうすぐ入って来る新入生のものになる。
 だからもう、戻ってくる場所はないんだよ。ここはお前たちの居場所じゃなくなるんだ。

 冷たい? 悲しい? 薄情?
 いや、学校っていうのはそういうところなんだよ。だから新しい居場所を早く見つけることだ。「あの頃がなつかしい」とか「もう一度戻りたい」とか、いつまでも年寄りみたいなこと言ってる場合じゃない。

 それと、もう一つ。
 最初に一つと言っておきながら、もう一つ、あと一つとダラダラ続けるのが教員の悪い癖だが、安心しろ。明日はないから。

 「私のことは忘れろ」
 私もみんなのことは忘れる。

 だってそうだろう。次の後輩たちが待ってるんだよ。私はそっちを面倒みなきゃいけない。出てった連中のことを考えてる暇なんてないんだよ。
 私の役割は終わった。どうしても先生が必要だって言うなら、大学や次の学校で探してくれ。

 私は、海に浮かぶブイだ。道端に佇む道標だ。進む方向が分からないときは結構頼りになるが、そこを通り過ぎてしまえば、もう用はない。存在すら忘れられていい。

 振り返るな。後戻りするな。前だけを見て進め。

 とか言いながら、目はお前たちの背中を追い続けそうだからさ。早く遠くまで行ってくれ。見えなくなるくらい、ずっとずっと先まで。
 以上、ホームルーム終了!

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