「90歳。何がめでたい」、その気持ち少し分かる

 佐藤愛子著「90歳。何がめでたい」(小学館:1200円)を読んだ。68万部突破のベストセラーということだ。

 佐藤愛子は半世紀前の直木賞受賞作家だ。正確には1969年上期の受賞。
 同じとき、庄司薫が「赤頭巾ちゃん気をつけて」で芥川賞を受賞しており、高校3年生だった私の興味はそっちに向いていた。同級生の誰だったかが、受賞作の載った文芸春秋を買ってきて、「これ、面白いぞ」というので、借りて読んだ記憶がある。
 というわけで当時は、佐藤愛子? 知らんな。

 佐藤愛子は大正12年生まれというから、昨年死んだ14年生まれのわが母と同世代だ。そんな「お婆ちゃん」が、いまだ現役作家とは驚きだ。
 私は90歳まで生きないと思うが、仮に生きながらえたとして、今から25年後、人が読むに堪える文章を書けるかどうか。今だって相当に怪しいのであるから、絶対に無理だ。

 本書は、女性週刊誌に連載されたエッセイをまとめたものである。
 筆者は、テレビ番組や新聞や、日常のさまざまなことに怒りをぶちまけている。いちいち、昔はこうだったと言われると、若い人はイラっとくるかもしれないが、私などはザックリ言えば、「年寄り」という同じカテゴリーに属しているので共感できる部分が多い。本書がベストセラーになったのは、そういう世代の支持があったためだろう。

 筆者の父(佐藤紅緑)は著名な作家で、いわばお嬢様育ちと言っていいが、その後の人生は波乱万丈だ。直木賞受賞作「戦いすんで日が暮れて」も、夫の倒産による大借金の返済に奔走する自らの姿を描いたものだ。
 しかし、どんな逆境にあっても、明るくたくましく生き抜いてきた著者の生き様は、痛快でもあるし、悩める人々に勇気を与えるかもしれない。

 最近、ただぼんやり生きるだけで、本来悩むべきはずのことも、無気力にやり過ごしてしまう私は、ちょっとばかり喝を入れられた気分だ。

コメント

コメントの投稿