経験談だけではすぐにネタが尽きる

 先生は生徒に対してよく自身の経験談を話す。私もそうだった。
 若い時分は、生徒との距離も近く、それなりに効果があったと思っているが、実は、生徒をある方向に導きたかったら、成功談より失敗談のほうが効き目があると気づいたのはだいぶ後になってからであり、その点は非常に悔いの残るところである。

 身近な人の経験談は、生徒にとって興味深いものであるから、それを話すのは悪くない。ただ、先生というのは、こと勉強に関しては成功談の方をより多く持っている人種であるから、よほど気をつけないと「先生ってすごいだろう」という自慢話に聞こえてしまい説得力を失う危険がある。

 失敗談も度を越すとただの笑い話になってしまうが、うまく使えば共感を得られるかもしれないし、生徒が勝手に「オレはそんなへまはしねえぜ」などと堅く決意してしまうかもしれない。

 以上が、生徒に自身の経験談を語る場合の、個人的経験に基づく注意事項である。

 さて。
 一人の人間が経験できることなど高が知れているから、自身の過去の経験談だけに頼っているとネタはすぐに枯渇する。受験生や保護者相手に書いたり喋ったりすることが多い私にとってこれは悩ましい問題である。

 心がけているのは、調査・分析と取材だ。
 特に取材が重要だと考えている。
 情報というと、すぐにテレビや新聞、そして現代ならネットを思い浮かべるが、ここに流れている情報には必ず発信元があるわけだ。誰かがどこかで見たり聞いたりしたことが文章や写真・動画として流されている。

 これらを自分の中に取り込み、再構成して発信するのも大事な仕事なのだが、できれば、自分が現地に赴き、直接見たり聞いたりして発信したい。

 と、頭では分かっているのだが、私は人づきあいがホント苦手だ。人に自慢できるほどの行動力もない。加えて日々進行する老化である。
 これじゃ、情報なんて入って来ないよな。

 かくして賞味期限切れの古い経験談を蒸し返すことの多い毎日なのであるが、このまま朽ちて行くのも癪なので、新しいネタをどんどん仕入れて、「若いころのオレの経験」だけに頼らない話をしたいと思っているところだ。

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