「拙速感は否めない」は批判なのか、そうじゃないのか

 「拙速感は否めない」(せっそくかんはいなめない)。
 よく聞く表現で、拙速とは出来栄えは良くないが、仕事が早いといった意味だ。

 使い方の実例。
 「合同チームは、2日夜のパーティーでの会話をきっかけに急に決まった。世界一を決める真剣勝負の場で、突然のルール変更。3日の記者会見では『公平性を損ねる』と質問が出た。国際卓球連盟のバイカート会長は『ルールを超えた出来事。平和へのサインだ』と語気を強めたが、拙速感は否めない」(朝日新聞デジタルから引用)。

 卓球世界選手権で、共に準々決勝に進んだ韓国、北朝鮮の女子チームが、突然戦うのをやめて明日から合同チームになりますと宣言。何とそれを国際卓球連盟が認めてしまったという前代未聞の出来事。
 言い出す方も言い出す方だが、認める方も認める方だ。

 この誰が見たって明らかなルール違反を明確に非難せず、むしろ擁護するような論調でまとめるのは、さすが朝日新聞だ。

 「世界一を決める真剣勝負の場で、突然のルール変更」と、一応は事実を伝える。
 本来ならここで、「不公平だ」「許されない暴挙だ」などと批判すべきところだが、それはしたくない(らしい)。
 そこで「公平性を損ねる」という文言を巧みに盛り込みながら、ただし、これは朝日の考えではなく、記者会見で、そういう「質問が出た」のだと逃げを打つ。
 そして、きわめつけが結びの「拙速感は否めない」だ。
 「断じて認めてはならない」はずだが、連盟会長の「平和へのサインだ」という言葉を引きながら、ルール違反がいけないのではなく、急であったことが問題なのだとすり替えを図る。しかも、「あまりにも拙速だ」と断言せず、「拙速感は否めない」と持って回った表現でまとめる。

 実にうまい。
 というのは、もちろん皮肉半分だが、後でどうとでも言い訳できる文章をササっと書けるのは一つの能力だ。って、結局これも皮肉か。

 
 最後におまけ。
 「巧遅は拙速に如かず」(こうちはせっそくにしかず)という言葉がある。
 上手だが遅いよりも、下手でも速いほうがよいという意味だが、これはビジネスの世界では大事なことだ。
 私はこのことを「明日の100点より、今日の70点」と言っている(誰かの言葉かもしれないが)。
 仕事上、デザイナーやコピーライターとの付き合いが多いのだが、とにかく仕事が早い人がいる。業界用語で「手が早い」(変な意味じゃなくて)と言ったりするが、経験的に言えばそういう人と組んだ方が、最終的にはいい仕事ができる。
 拙速も悪くない。

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受験生・保護者の皆さん、学校や塾の先生方に最新情報をお届けします。ただし、結構頻繁に受験と無関係の話も。

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