「学びのサプリ」を「うなずき」ながら読む

 開智未来中学高校の塾説明会に出席。
 昨日も別の用事で行っているので2日連続だ。

 埼玉県民の感覚、と言うより私の感覚では、利根川を渡った向こう側は栃木県や茨城県なのだが、埼玉県加須市の一部は、利根川の向こう側にもあるのだ。
 たまに行くと、はてしなく遠いところに来た気分になるが、回を重ねると、そうでもないと思えてくる。が、やっぱり浦和からだと遠いかな。

 校長の関根均先生は、元は県立高校の校長だ。
 県立の校長から私立の校長へというパターンはよくあることだが、普通は県立を定年退職してからだ。しかし、関根校長は、県立を途中でやめて私立に転じた。異色の経歴だ。

 異色で思い出したが、私が初めて関根校長に会ったのは、関根先生が開智の校長になった直後のことで、たしかそのときに、「最初の職員会議のとき、先生方に、生徒には毎日腹筋と腕立てをやらせてほしい」とお願いしたという話を聞いた。
 実行されたかどうか定かではないが、いきなり身体づくりの話をするとは面白い人だと思った。

 で、ここからが本題なのだが、今日の説明会で、関根校長の著書「学びのサプリ~きっと偏差値が10上がる“希望”の学習法」(学事出版)をいただいた。
 帰って来てさっそく読んだ。
 私の場合、本を後で読むという習慣はなく、手にした瞬間に読む。

 第1章目。「サプリ体操」。
 なるほど、そこから入って来たか。分かるな。
 さらに読み進むと、第4章目に「学びの身体論」というのが出てきた。ますます分かるな。
 初対面のときの記憶に間違いはなかった。やはり関根校長は、脳のはたらきは、身体や心の動きと密接に関連しているという信念をずっと持っていたんだ。

 「学びのサプリ」は、その実践を綴った本なのだが、私はいちいち「うなずき」つつ読んだ。以前に、関根校長の講演を聞いたとき、人の話は「うなずき」ながら聞くものだと言われたので、それを実行してみたのだ。

 この本は、成績を上げたい中高生に読んでもらいたいが、お父さんやお母さん、それに学校や塾の先生にもおすすめだ。なんなら伸び悩んでいるサラリーマンが読んでもいいかもしれない。

 「学びのサプリ」

40年前の大手塾では、何をどう教えていたか

 佐藤優「先生と私」 (幻冬舎文庫・650円+税)

 佐藤優(さとう・まさる)氏は、元外交官で、現在は作家・評論家として活躍している。氏の言説には、賛成しかねる点も多いのだが、作家がどんな思想を持ち、どんな発言をしようと自由だ。
 気に入らなきゃ、読んだり、見たり聞いたりしなければいいだけの話だ。

 佐藤氏は県立浦和高校の出身である。調べてみたら、私より8年下だった。
 私は、教育実習を母校の浦高でやっていて、その時の3年生という計算になるから、どこかにいたということだ。まあ、どうでもいいが。

 佐藤氏の著作では、「国家の罠~外務省のラスプーチンと呼ばれて~」(新潮文庫)を読んだことがある。「獄中記」(岩波現代文庫)も読んだはずだが、内容はよく覚えていない。

 「先生と私」を読んだのは、パラパラとページをめくってみたら、植竹中学校とか、浦高・一女とか、山田義塾とか、よく知る名前が結構登場していたからだ。

 山田義塾というのは、大手塾チェーンの走りのような会社で、創業は1966年と栄光ゼミナールやスクール21などよりずっと古く、一時は首都圏に50教室以上を展開し、塾生も2万数千名を数えたというが、内紛が相次いだこともあり、いまは存在しない。

 本書では、その山田義塾の先生と、佐藤少年との交流が、仔細に描かれているが、これが、今ではちょっと想像できないくらい濃密であり、指導内容も高校受験塾とは思えないほど高度なものなのだ。

 たとえば、塾の先生が授業中にこんな説明をする。
 「文章は、内容を変えずに、伸ばしたり、縮めたりすることができる。短くすることを要約といい、長くする方を敷衍という。要約は、少し訓練を積めば、誰にでもできるようになるが、敷衍は難しい。いろいろな背景知識や、比較する他の文学の例を知らないとできません。高校入試問題でも『要約せよ』という問題はたくさん出るけれども、『敷衍せよ』という問題は出ない。しかし、大学生になったり、社会に出てから、物事を敷衍する力はとても重要になります」(本書73頁:第三章山田義塾より)

 本ブログの読者の中には、塾の先生もおられると思うが、塾産業の黎明期である1970年代後半から1980年代初頭の塾とはどんなものだったかを知るには、絶好のテキストになるかもしれない。
 もちろん、佐藤少年は少し変わった子だったようなので、その点を割り引きながら読まなくてはいけないが、「塾とは何なのか」ということを、改めて考えさせられた一冊であった。

勝者が誰もいない「いじめ自殺」裁判の顛末

 昨夜は、熊本地震のことで暗い気持ちになっているところへ、さらに重たい気分になる本を読んでしまった。

 福田ますみ「モンスターマザー」(新潮社:1400円+税)
 「長野・丸子実業『いじめ自殺事件』教師たちの闘い」 というサブタイトルがついている。

 これは小説(フィクション)ではなく、実際に起きた事件を題材としたルポルタージュである。
 ノンフィクションであるから、教師や生徒は仮名だが、県議・弁護士など実名で登場する人物も多い。

 2005年、長野県丸子実業高校(現・丸子修学館高校)バレーボール部の男子生徒が自宅で自殺した。
 部内でのイジメを苦にした自殺とされ、「丸子実業バレー部員イジメ自殺事件」としてマスコミでも大きく取り上げられたので、ご存知の方も多いだろう。
 事件の概要や、本書の内容については、ネットで検索すれば山ほど出てくるので、興味がある方は、ご自身で調べていただきたい。

 私はなぜ重たい気分になったか。
 それは、一つの小さな事件、もちろん少年が一人亡くなっているのだから、その意味では決して小さくはないのだが、もしかしたら命が救われ、多くの人が深い傷を負わなくても済んだ事件が、結果的には、関わった人すべてを不幸にしてしまうという、後味の悪い結末になっているからだ。

 まず、新聞やテレビが取り上げるが、悪いのは先生や学校や教育委員会であるという形でしか報道しない。真相を究明するよりも、悪者を叩くことに主眼がおかれる。
 それを見たり読んだりした人々が、ネットを通じて、悪者成敗に参加する。
 さらに、県会議員やら弁護士らが、弱者の味方として現れ、加勢する。

 このパターン。イジメ問題に限らず、今も繰り返し行われている。

 しかし、この事件では、加害者とされた生徒・保護者や先生・学校が反撃に出る。
 殺人罪で告訴された校長ら学校側が、生徒の母親を逆告訴し、さらには、担当弁護士までも告訴する。

 結果は、8年にも及ぶ長い歳月をかけ、ほぼ学校側の全面勝訴に終わるのだが、とてもじゃないが「ああ、よかった」という晴ればれした気分にはなれない。

 生徒を一人失ったのだ。加害者とされ裁判で被告席に座らせ、生徒に深い傷を負わせてしまったのだ。
 だから、裁判に勝ったと言っても、自分たちが勝者だと思っている先生は、一人もいないだろう。
 本書は、そういう不幸な事件の顛末を描いた力作だ。

 

世界の争いごとのほとんどは、民族と宗教が原因

 病院での待ち時間は、私の読書タイムである。

 茂木誠「ニュースの“なぜ?”は世界史に学べ ~ 日本人が知らない100の疑問」 (SB新書:定価800円+税)

 2016年3月30日初版第5刷とあるから、そこそこ売れている本なのだろう。
 茂木氏の肩書は、駿台予備学校世界史講師。
 であるが、読者ターゲットは、受験生ではなくビジネスマンのようである。

 予備校の先生が書いた本であるから、分かりやすく面白い。
 「池上彰さん系」とでも言っておこう。

 ただ、高校でちょこっと世界史を教えた程度の私であっても、「ちょっと待てよ。その説明は乱暴すぎるだろう」という点が多々あったので、歴史学者や経済学者、政治学者などの専門家からすれば、おそらく、ツッコミどころ満載だと思われる。

 がしかし、この手の本に意味がないかと言うと、そんなことはないと思う。
 われわれは、世の中のあらゆる事柄について、専門家並みに精通している必要はないわけだし、だいいち、そんなことは不可能だ。

 自分の本業以外のことについては、何となく分かっているとか、だいたい分かっているという程度でいいのである。それでも十分過ぎるほどである。

 本書の章立ては、こんな感じ。
 第1章 ヨーロッパの憂鬱 ウクライナ問題と難民問題
 第2章 台頭するイスラム過激派と宗教戦争
 第3章 アメリカのグローバリズムと中国の野望

 たしかに、これらの問題は、目の前で起きている現象だけを見ても、よく分からない。現下の政治、経済の問題であるだけでなく、歴史的、民族的、宗教的な問題でもあるから、そこを紐解いてみないことには本質が見えてこない。

 なるほど、そういう歴史的な背景があったのね。
 そんなことをお手軽に知るにはいいんじゃないかと思う。

 私の場合、仕事柄、知らない人名や地名、出来事は登場しないので、2時間程度でささっと読めたが、高校で世界史をやって来なかった人は、読むのに少し苦労するかもしれない。

ホリエモンが言うから説得力があるんだ

 今日の読書は、堀江貴文「本音で生きる」(SB新書;定価800円+税)。
 
 ホリエモンは1972年生まれだから、1951年生まれの私とは21歳違いだ。
 今風に言えば、私の方が21個上。
 ということで、私は、すでに人生どう生きるかを考える年齢ではなくなっている。関心はむしろ、どう死ぬかのほうにある。

 だから、若い堀江氏の著書から、生き方について学ぶことがないのは、最初から分かっていることなのだが、帯に書かれている「大反響 12万部突破!」に惹かれた。なるほど、奥付にも2016年3月7日初版第7刷発行とある。非常によく売れているのだ。

 私は、よく売れている本は、できるだけ読むようにしている。
 若いころは、そういう本に、あえて背を向けるようなところもあったが、出版関係の仕事に就いたのをきっかけに、積極的に読むようになった。売れる本には売れるだけの理由があるはずだから、それを知りたいというのが動機であった。

 さて、この本はなぜ売れているか。
 ホリエモンが書いた本だからである。

 中身は、別に堀江氏に言ってもらわなくても、誰だって分かっていることばかりである。このぐらいなら自分でも書けるんじゃないかと思ったほどだ。
 だが、私が書いたのでは、100冊も売れればいいほうで、ほぼ無視されるだろう。この差は何なのか。

 堀江氏は、東大在学中に起業し(後のライブドア)、時代の最先端を行く企業に育て上げた。プロ野球球団を買収しようとしたり、テレビ局を買収しようとしたりして、世間から注目を浴びた。そして、ちょっとしたつまづきがあって、証券取引法違反で逮捕され、服役した。
 これ全部、20代から30代にかけての出来事。

 生理的に好きになれないという人もいるかもしれない。結局、経営者としては失敗しているではないかと言う人もいるだろう。
 が、かれの前半生は、なかなかに痛快ではないか。お前やってみろと言われたって、そうやすやすとできるものじゃない。

 波乱万丈、と言ったら言い過ぎかもしれないが、短い間に浮き沈みの激しい面白そうな人生を送ってきて、激しく人を批判するものの、どこか憎めないお兄さん風なところもあるホリエモンが書いた本なら、ちょいと買って読んでみようじゃないか。そういうことなんだろう

 小見出しのほんの一部だ。
「お金がない」という言い訳は無意味である
「時間がないから、できない」は、現状維持を望んでいるだけ
やってみないと「自信」はつかない
何を学ぶべきかは、その時にならないとわからない
人のやっていることを徹底的に真似し、改善する

 一見異端児風だが、言っていることは正統派。
プロフィール

梅野弘之

Author:梅野弘之
受験生・保護者の皆さん、学校や塾の先生方に最新情報をお届けします。ただし、結構頻繁に受験と無関係の話も。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
当ブログを訪問された方
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード