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こんな成人式式辞でどうだ

 成人式式辞。

 皆さん、成人式おめでとうございます。
 先ほど、一部のおバカな連中が式を妨害し、警察のお世話になりました。
 見た目は大人ですが、おつむの中身は幼稚園児か小学生並みで、かれらにはまだ、成人式は早すぎたようです。いや、おそらくかれらは、精神的な意味では一生涯、成人となることはないでしょう。

 かれらの中には、いずれまっとうな生活に戻り、少なくとも他人様(ひとさま)に迷惑をかけない程度の人間になる者もいるかもしれませんが、あまり期待できません。たいていは社会のお荷物になります。
 しかし、かれらも、れっきとした日本人ですから、この国で人並みに生きて行く権利は保証されています。つまり、一定数のおバカも含めてこの国は成り立っているのです。

 要はバランスの問題です。
 車と荷物の関係にたとえれば分かると思います。
 少しくらい荷物が重くたって、エンジンの馬力さえがあれば、車は前に進んで行けるのです。パワーのある人間と、しっかりとしたハンドルさばきができる人間さえいれば、荷物の重さは大して問題にはならないのです。

 成人式は、荷物とエンジンを見きわめる日です。
 見たところ、数十人のお荷物がいたようですが、心配ありません。なぜなら、私の目の前にはエンジンとなるべき、数百人の若者がいるからです。心強く思います。

 皆さんがこれから先、いろいろな場所で、世の中を動かすエンジンの役割を果たしてくれれば、この国は前に進めます。たとえ、お荷物があったとしても、です。

 皆さんが待ち望んでいた、せっかくの晴れの日を、こともあろうに皆さんの同世代がぶち壊しにしようとしたのは、実に残念だし、悔しいことですが、これが世の中というものです。皆さんのお父さんやお母さんも、ただ自分一人が生きるだけではなく、幼かった皆さんの分まで働き、年老いたおじいさんやおばあさんの分まで働き、おまけに役立たずのお荷物の分まで働き、その結果今日この場に皆さんを送り出してくれたのです。有り難いことです。

 さあ、今度は皆さんの番です。ちょっとばかりお荷物はありますが、なに、みんなで力を合わせれば、どうということはありません。健闘を祈ります。


喪主のご挨拶って難しい

 昨日は母の告別式。出棺の前に、喪主である私には、ご会葬の皆様方に謝辞を述べるという役割があった。

 何を言ったかな?
 たぶん、しばらくすると忘れてしまう。
 実際、15年前の父の時に何を言ったか覚えていない。
 そこで、記憶が新しいうちに書き起こしておくことにした。

●謝辞(喪主挨拶)
 「皆様におかれましてはご多用の折、また連日の猛暑の中、加えて本日は早朝より亡き母の葬儀にご参列下さいまして有難うございました。

 8月6日夜、90歳で永眠いたしました。
 大往生であったと思っています。

 大往生には立派な死に方という意味がありますが、もう一つ、少しも苦しむことなく安らかに死ぬという意味があると聞いています。
 特に持病はなく、長期の入院という経験もありませんでした。晩年は、直近の記憶がややあいまいになることはありましたが、身の回りのことはすべて自分自身でやっておりました。
 ですから当日も、いつものように夕食をとり、就寝前に歯を磨き、顔を洗っておりましたが、その際に発作に襲われたものです。直接の死因は、急性大動脈解離ということでした。一瞬のことだったと思われます。
 日頃から、「周りに迷惑がかからないように、さっと死にたい」と申しておりましたが、正に願い通りの最期となりました。
 その意味で大往生でありました。

 大正末に生まれ、昭和をまるまる生き、平成の今日に至った90年の生涯は、はたして幸せな人生だったのか、悔いのない人生だったのか。それは本人のみぞ知るところでありますが、何事にも前向きで、逆境にも弱音を吐かず、常に明るく生きてきた母でありますから、おそらく「楽しい人生」だったと思っているに違いありません。
 ここに生前賜りましたご厚情に深く感謝し、ご挨拶とさせていただきます。」

 だいたいこんなところだったかな。

 講演会なんかだと、一発受け狙いのギャグを飛ばしたりするんだが、状況が状況だから、そういうわけにもいかない。人前で喋るのは慣れているといっても、こういう場面でのあいさつは難しいね。
 まあ、この先はないから、いいか。

「女子が子供を2人以上生むこと」、そう、それは大切だと思うよ

◆某中学校、全校集会におけるU校長の講話

 まず女子に言いたい。
 将来、子供を2人以上生んでほしい。
 これは仕事でキャリアを積むのと同じくらい価値あることだ。

 よく少子高齢化と言われるが、高齢化はいいと思う。昔は「人生50年」などと言われたが、みんなが健康で100歳まで生きられるとしたら、人生を2回生きられるみたいなもんだ。楽しいじゃないか。だから、高齢化が困ったことだと言う人はいないと思う。

 一方、少子化はどうだ。私は、これはちょっと困ったことだと思う。

 ところで。
 キミたちは、いまなぜ自分がここにいるかを考えたことがあるか。
 それは、ひいおばあちゃんがおばあちゃんを生み、おばあちゃんがお母さんを生み、お母さんがキミたちを生んだからだ。そうやって、命をつないできたから、今キミたちがここにいる。

 命をつないで行くこと。それは尊いことだ。
 この世に生を受けた者は、その生をつないで行かなければならない。
 少子化というのは、その生のつながりが、命のつながりが、だんだんとか細く、弱くなっていく現象だ。
 だから私は、少子化がいいことだとは思わない。少なくとも、どんどん少子化が進んだほうがいいとは思わない。
 
 もちろん、身体的な理由で子供が生めない人がいるかもしれない。結婚しない人もいるかもしれない。だが、子供を育てるということは、社会全体で行うものでもあるから、そういう人は、また別の形で力になってくれればいい。それも尊いことだ。

 さあ、今度は男子だ。おい、他人事だと思って聞いてる場合じゃないぞ。
 子供を生み育てるという、尊く、また困難な営みは、男子と女子が力を合わせてするものだ。
 命をつないで行く責任は男子にもあるのだ。イケメンよりもイクメンを誇りとしようじゃないか。

 仕事を通じて社会に貢献しながら、子育てをする。どっちも大事、どっちも大変。
 だが、それをお父さんやお母さんがしてくれているおかげで、今キミたちはここにいる。感謝しなければいかんね。

 ただ、仕事と子育ての両立は、キミたちにとってまだ先の話だ。
 では、今は何をやるか。
 そう、勉強と部活の両立だ。
 子育ての方は、いずれ時期が来れば終わるが、勉強は一生続く。そのための基礎をしっかり築くのが、中学時代なのだ。
 ということで、いつものことだが、私が言いたいのは、「勉強しなさい」ということだ。

 
 以上は架空の講話。私の創作。
 ただし、これには元ネタがある。
 大阪市立茨田北中学校の校長講話だ。

 この講話の一部を問題視する匿名の電話が市教委にあり、朝日新聞(朝日新聞デジタル)が取り上げ、「不適切な表現あり」として、市教委が校長処分を検討するという事態になった。

 ニュースでは発言全体(発言要旨)も掲載しているが、見出しは、「『女性は2人以上産むことが大切』中学校長、全校集会で」というものであり、記事もそこを中心に書かれている。

 全校集会の講話や、入学式・卒業式の式辞にまで、いちいちイチャモンをつけられるんじゃ先生もたまったもんじゃない。それも言葉尻をとらえられて。

 まったく、このようなマスコミの報道の仕方にはイライラする。
 というのは先月も書いたことだが、 なぜこのような報道が後を絶たないのかを、もう一度冷静に考えてみる必要がある。

 われわれは、論理よりも表現に敏感であるようだ。
 「言ってることは分かるけど、その言い方が気に食わない」という、あれだ。
 身に覚えがある。

 論理には論理をもって反論しなければならないが、論理がなくても表現や言い回し、単語に反応することはできる。マスコミはそこを分かっているから、しばしば論理ではなく表現を取り上げる。そのほうが「受け」がいいからだ。
 そう考えると、このような報道の仕方が後を絶たない原因の半分は、読者の側にあるのではないかと思えてくる。

 表現はどうでもいいとは思わないが、そこだけにとらわれてはいけない。
 全体として何を言いたいのか、どういう主張なのかに目を向ける習慣を身につけなければならない。
 と、改めて感じた次第である。

 
 
 ※校長の発言要旨は、「続きを読む」でご覧いただきたい。

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話題とった信州大学長の勝ち

 信州大の学長が、入学式の式辞で、「スマホやめますか、信大生やめますか」と新入生に迫ったというニュース。

 昔、覚せい剤追放のキャンペーンで、「覚せい剤やめますか? それとも人間やめますか」という公共CMがあったが、ちょっとそれを思い出した。もしかしたら、それが元ネタか。

 昭和の時代だが、東大の卒業式で、大河内一男総長が、「太った豚より、痩せたソクラテスたれ」というような訓示をたれて、これは結構話題になったと記憶している。
 もうひとつ。
 震災の年、立教新座高校の渡辺憲司校長が、卒業生に送ったメッセージも、かなり話題になった。

 まあ、このような例もあるが、毎年、何千何万という学校で入学式や卒業式が行われているわけで、式辞のいちいちが話題になることはめったにないことだ。

 そういう意味では、新聞・テレビあるいはネットで、これだけ話題をとったのだから、広告効果は抜群で、これはもう、信州大学長の勝ちである。

 「スマホ依存から脱しましょう」とか、「使い方を考えましょう」では、当たり前すぎて、面白くもなんともない。
 でも、「スマホやめますか」と言われると、中には、「今の時代、それは無理だろう」、「時代錯誤だろう」などと、言葉通り受け取ってしまう人もいて、大いに盛り上がる。
 さらに、「信大生やめますか」と追い打ちをかければ、単純な人間は、「だったら大学ヤメだろう」なんて言い出して、騒ぎが大きくなる。

 もし、ここまで計算しての言葉だとしたら、大したもんだ。


※参考(元記事)朝日新聞より
 「スマホやめますか、それとも信大生やめますか」。信州大の入学式が4日、松本市総合体育館であり、山沢清人学長は、8学部の新入生約2千人に、こう迫った。
 山沢学長は、昨今の若者世代がスマートフォン偏重や依存症になっている風潮を憂慮。「スイッチを切って本を読み、友だちと話し、自分で考える習慣をつけ、物事を根本から考えて全力で行動することが独創性豊かな学生を育てる」と語りかけた。

そんな入学式式辞、あるわけない

 ■入学式式辞
 新入生の皆さん、保護者の皆様、ご入学おめでとうございます。
 合格発表から今日まで、皆さんは入学許可候補者などと、訳の分からない呼び方をされていましたが、先ほど、この私が「入学を許可する」と言った瞬間に、正式に本校の生徒になったわけです。
 
 これまで、皆さんには、説明会などで、ずいぶんと甘い言葉もかけてきました。その結果、もしかしたら、皆さんは理想の学校と勘違いしたかもしれません。残念でした。私が甘い言葉をかけてきたのは、皆さんにこの学校を受験してもらいたいがためであって、決して私の本心なんかではありません。
 今日からは、皆さんを煮て食おうが焼いて食おうが、私たちの思いのままです。そう考えると、思わず頬が緩んできます。

 しまったと今さら気づいても後の祭りです。
 今日はぜひ、「話半分」という言葉を覚えて帰ってください。人の話などというものは、半分が真実で、残り半分は嘘や誇張なのです。これが高校に入っての最初の学習です。

 皆さんは、本校の先生は、みな親切で優しいと思っているかもしれませんが、事実はまったく逆で、不親切で厳しい先生ばかりです。
 いちいち面倒なので、たいていのことは「そんなのは自分の頭で考えろ」と冷たく突き放します。その結果、皆さんは何度も失敗すると思いますが、その時に優しい言葉や慰めを期待してはいけません。「ものごと深く考えないからだ。失敗の責任は自分で取れ」と冷たく言い放ちます。
 今日はぜひ、「冷淡」、「冷血」、「人でなし」という言葉を覚えて帰ってください。

 では、何でも自分で考えて、思ったとおりに行動できるのかというと、そうは問屋が卸さないのです。自分で考えろと言う割には、いちいちうるさいのです。細かい規則がいっぱいあります。さらに腹が立つのは、それらの規則のほとんどは理不尽この上ないものだということです。
 理不尽な要求をして、皆さんが、もがき苦しむ姿を見るのは、私たちの最大の喜びです。これを見たくて教員をやっていると言っても、決して言い過ぎではありません。
 今日はぜひ、「理不尽」という言葉も覚えて帰ってください。

 皆さんは、高校は中学校より自由だと思っていたかもしれませんが、はっきり言って、それは誤解です。いや、妄想です。
 人間は、幼いほど自由なのです。赤ちゃんや幼児を見れば分かるでしょう。人間は成長し、年齢を重ねるごとに不自由になって行くものなのです。

 今日この瞬間から、皆さんは「夢」とか「希望」といった歯の浮くような言葉と訣別してください。そういうのは、ポスターやパンフレット用の言葉であって、スーパーのチラシにある「お買い得」なんかと大差ありません。

 現実に目を向けましょう。いや、そんなことを言わなくても、明日からは否応なく、これまで私が述べてきた現実に直面するのです。楽しみですね。

 皆さん、だんだん下を向いてしまいましたね。中には涙ぐんでいる人もいる。まさか、私の話に感動したわけではありませんね。

 では、この際ですから、もう一つ残念なお知らせをしておきます。
 私たちが、どれほど冷淡に接し、口うるさく注意し、理不尽な要求をしても、全然へこたれない連中がいるのです。
そう。明日、皆さんが対面する上級生たちです。
 かれらを見ると、残念でたまりません。まだまだ私たちは甘いのではないかと反省させられます。一体何がそんなに楽しいのでしょう。

 「もう逃げられないぞ。覚悟はいいか」。
 以上をもって、私の式辞といたします。
プロフィール

梅野弘之

Author:梅野弘之
受験生・保護者の皆さん、学校や塾の先生方に最新情報をお届けします。ただし、結構頻繁に受験と無関係の話も。

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