やって後悔しない公開授業

 2日前のことである。
 昨年に続き、県立熊谷高校の公開授業を見てきた。

 通常の土曜公開授業とは異なり、同校が実践する「骨太のリーダーを育成する高校生のための埼玉版リベラルアーツ事業」の一環としての公開授業&研究協議会なので、保護者・受験生などへの公開はない。

 私も若いころ何度か経験したが、こうした公開授業はなかなか厄介なものだ。保護者の授業参観だと親は自分の子しか見ていないが、見に来ているのは、みんなプロで、自分でも授業をする人たちであるから、見方が専門的で厳しいのだ。

 先生が生徒に「どう思うか」と意見を求める。
 先生の中には、こんな意見が出て、あんな意見も出てと、いくつかの想定された答えがある。で、この意見が出たら、それをきっかけに、こういう展開に持って行こうというようなシナリオが出来上がっている。

 プロ相手の公開授業が厄介なのは、そういうシナリオを全部読まれているという点だ。だから授業後の研究協議会で、「あの質問はなくてもよかった」とか「もっと別の聞き方もあった」とか、いろんなことを言われる。他にも、説明の仕方、板書の仕方、配布資料の中身とか、細かく突っ込まれたりもする。

 まあ、他校の先生から言われるのはいい。県の指導主事なんかも元は普通の先生だから許す。でも、文科省の役人だと腹立つな。テメエ授業やたことあんのか。あと、大学教授もダメ。研究することと、人にものを教えることは全然違うんだよ。

 というわけで、こっちにもいろいろ言い分はあるわけだが、いま振り返って考えると、この手の公開授業は、自身の授業を見直す絶好のチャンスであったのだ。成長にもつながっていたんだと思う。

 公立に比べると、私立にはこうした機会が少ないようなので、各校校長はじめ関係の皆さんには、ぜひ多くの機会を作り出していただきたい。

 熊谷高校公開授業01
 「知識構成型ジグソー法」を用いた協調学習という授業スタイル。私の現役時代にはなかった教え方だ。

 熊谷高校公開授業02
 歓迎のあいさつのつもりか?

私を相手にプレゼンしようとはいい度胸だ

 昨日は所沢北高校へ行ってきた。
 目的は、同校・上田祥子先生の公開授業を見ること。

 上田先生は、この夏、JICA(ジャイカ・「国際協力機構」)が実施する「教師海外研修」でタイに行ってきた。で、その研究成果を発表するのが、今日の授業。
 というわけだから、当然JICAの人も見に来ていた。それと大学の先生。近隣の松山高校、和光国際高校の先生方。おまけで「授業見物」を趣味とする私。

 今日の授業は、理数科1年生の国語総合。
 理数科は今春スタートしたばかりだから、かれらは第1期生だ。
 数学や英語が得意なのは分かるが、国語はどうなんだろう。と思いきや、知的好奇心が旺盛なんだろうね。何というか、実に食いつきがよろしい。これは期待できるぞ。

 私は1年前にも上田先生の授業を見ているのだが、このときは、七面倒くさい論説文の読解を、さらに理詰めでぐいぐい攻めて行くような、いわば国語の本道を行く授業だったが、今回は、プレゼンテーションに主眼を置く、いわゆるアクティブ・ラーニング系の授業スタイルだった。
 上田先生、どんどん幅を広げてるね。こっちも期待できるぞ。

 授業の後半、「教室内の誰でもいいから、相手を見つけて自分の意見を聞いてもらいなさい」という時間があった。
 教室内には、生徒だけじゃなく、われわれ外部の人間や、同校のたくさんの先生もいるわけで、中には校長をつかまえてプレゼンしている子がいたりする。

 私のところにも「聞いてもらえますか」と声をかけてきた生徒がいた。
 「おうおう、オマエなかなか度胸あるな。普通、先生だってオレには近づかんぞ。危険人物と言われてるんだ」。

 かれは、教師に求められる人間性ということについて熱く語った。
 「おうおう、オレにぴったりのテーマだ。つかまえた人間まちがってないぞ。いい勘してるじゃないか」

 聞けば、かれには障害を持つ妹がいるという。かれは、妹に接する担任の先生の態度に疑問を持った。かけた言葉に怒りを覚えた。
 かれは言う。教師にまず求められるのは人間性である。そして、その人間性は教師になってから獲得すべきものではなく、小中高の学びの中で得るべきものである。
 「まったくそのとおりだ。職員会議で発表してやれよ」

 男子生徒君。キミはその怒りを、静かな怒りを、持ち続けよ。そして、いつの日か、「私憤」を「公憤」へと変えていかなければならない。世の中を変えるとはそういうことだ。そのために必要なのは、キミ自身も言うところの「学び」である。
 という話。よく分からなかったら、上田先生に聞いてくれ。きっと理詰めでギシギシと教えてくれるだろう。


ペアワークもなかなかいいね

 今日の見学(取材)校は市立川口高校。
 現在、川口市には同校のほか、川口総合、県陽という市立高校があるが、平成30年度には、これら3校が統合され「新・川口市立高校」となる。
 校地は、現在の川口総合高校の場所で、いま新校舎の建設が進んでいる。
 「新・川口市立高校」に関する情報はコチラから

 さて、今日の授業である。
 三上先生が担当する3年文系の英語。

 三上先生は、ICT教育の第一人者で、学校の教員向け研修でも講師を務めるほどだ。この日の授業も、パソコンやプロジェクターを利用したものだった。
 が、現在の市立川口高校は、ICT教育を行う環境が十分に整っておらず、苦労が多そうだった。最新鋭の機器を取り入れるという「新・川口市立高校」に期待しよう。

 ペアワークという手法を取り入れていた。
 ごくごく簡単に言うと、隣同士の生徒が相談したり、考えを述べあったりしながら、先生から与えられた課題を解決していくものだ。

 それって、アクティブラーニング?
 まあ、そういう理解でいいと思う。埼玉県公立高校の言い方なら協調学習だ。

 三上先生は、かなり以前から、いわゆるアクティブラーニングの研究と実践を続けている。先駆者の一人と言っていいだろう。
 だから、その分だけ、アクティブラーニングのメリットもデメリットもよく分かっている。
 そこで、アクティブラーニングのマイナス面を補う方法をさまざま考えた。
 そしてたどり着いた結論の一つが、今日も行われたペアワークという手法だ。
 このやり方だと、机を移動したりという時間的ロスがないし、仲間に頼りっきりで傍観者になる生徒もいない。

 三上先生は言う。
 「ICTを活用した英語授業を広めたい」
 「いつでもどこでも誰でもできるアクティブラーニングの手法を広めたい」
 「新・川口市立高校の良さを広めたい」
 そうか、『伝道者・三上』なんだね。期待してるよ。
 市立川口 三上先生01
 安定感抜群! いや体じゃなく授業のことだ

 市立川口 三上先生02
 5分に1回くらいのペースでこんな場面がある

※追伸
 英語科の他の先生も授業を見に来ていた。こういう先生は、自分でもいい授業をやるんだろうね。今度見てみたい。


 

極限まで生徒の思考を深めさせるベテランの技

 昨日も川越、今日も川越。

 川越南高校に授業を見に行ってきた。
 リオ五輪・近代五種に出場した朝長なつ美選手(23=警視庁)の母校である。近代五種とは、フェンシングと水泳と馬術と射撃とランニングを一人でやるという、考えただけでも大変そうな競技。彼女はまだ若く、東京五輪での活躍も期待できる。

 さて、今日の授業は、黛(まゆずみ)先生による1年生・国語総合で、単元は漢文だった。中国の古い書物「戦国策」の中にある『借虎威』が題材だ。
 『借虎威』は、「虎の威を借る狐」の話だから、知っている人も多いだろう。

 授業は協調学習と言われる形態で進められた。最近の言い方だとアクティブ・ラーニング。生徒はグループを作り、白文(はくぶん)を書き下し文にして、さらに口語訳をつけるという課題に挑む。

 黛先生は、課題を示し、いくつかの注意事項を述べた後、各グループの様子を見まわるのだが、生徒との会話はきわめて少ない。よほど方向性がずれていれば、一言二言注意を与えるが、それ以外は質問を受けたり、ヒントを与えたりということはしない。とにかく、生徒たちに自分の頭で考えさせ、答えを見つけ出させる。普通は、どうしてもヒントの一つや二つ与えたくなるもんだが、それをしない。
 
 このやり方は非常に難しい。いずれ答えは出るかもしれないが、いつまでも一つの単元にとどまっているわけには行かない。授業には時間の制約があるからだ。
 全体の授業進度を考えつつ、極限まで生徒の思考を深めさせる。これはやはりベテランならではの技だ。
 
 先日の栄北の授業と同様、ここでも「教え過ぎ」は生徒のためにならないということを学ばせてもらった。

 川越南02
 じっと見てる
 川越南01
 まだ見てる


構造式教える先生は、頭の構造もよく分かっていた

 午前中は、栄北高校の塾対象説明会に参加。
 そのまま居残って、午後は授業の取材。学校滞在時間6時間30分。
 これだけ長時間いると、いろんなものが見られる。

 この学校、県内でも指折りの交通至便校だ。
 大宮駅から埼玉新都市交通(ニューシャトル)に乗り15分。丸山駅下車。そこから学校まで徒歩3分。
 朝の7時台は14本も出ているから、大宮駅での待ち時間は5分あるかないか。ただ、ニューシャトルの運賃はちょっと高い。

 さて、今日の授業見学は、1年生の理科(化学)。
 担当は高沢先生。 見た目、体育の先生で、体が大きく強そうだが、実は優しい。

 今日のテーマは構造式。
 と言っても、中学生には分かりにくいかもしれないが、化学式の仲間だ。
 高沢先生は教員経験18年というから、まあベテランの域に達していると言っていい。
 
 私がさすがと思ったのは、教え過ぎない技術。
 そんな技術あるの?
 
 若く経験の浅い先生は、しばしば教えすぎてしまう。
 いや、今はまだその知識要らないでしょうというところまで教えてしまう。
 結果、生徒の頭は大混乱。

 だが、高沢先生ほどのベテランになると、そういったミスは犯さない。
 さしあたりここだけはというところは、何度も念を押すが、大事だが今は必要ないというところは、さらっと流す。
 と、口で言うと簡単そうだが、案外そうでもない。

 私も、授業が終わってから、「しまった。言わなきゃよかった」と思うことが何度もあった。
 言いそびれたことは、後で追加すればいいのだが、いったん言ってしまったものは、後からあれはなしよと言っても手遅れだ。

 構造式を教える先生は、生徒の頭の構造式もよく分かっていたという話。
プロフィール

梅野弘之

Author:梅野弘之
受験生・保護者の皆さん、学校や塾の先生方に最新情報をお届けします。ただし、結構頻繁に受験と無関係の話も。

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