私は恥ずかしくてまだ使えんな。
「ローンチ」。
英語で「launch」。
元々は、ロケットを発射するとか、船が進水するとか、そんな意味らしい。転じて、新しいサービスなどを立ち上げるといった意味で使われている。IT業界から始まったようだ。
私の仕事相手は基本的に学校や塾なので、最新のカタカナビジネス用語が飛び交うことはない。
が、そんな私でも、大手企業やIT企業、マスコミ・広告やその周辺業界の人々との接点が多少はあるわけで、そんな時は、カタカナビジネス用語の氾濫にうんざりするわけである。
「今日のアジェンダはレジュメのとおりです。前回の打ち合わせを踏まえてリスケしてみましたが、4月当初のローンチは動かせないことから、相当タイトになっています。今日中にはフィックスして早急に次のステージに移る必要があります。ボトルネックになっていた人員の件ですが、われわれのプロジェクトに新メンバー2人がアサインされましたので、その点はクリアされました」。
おいおい、そこまで言うなら、全部英語でやろうぜ。
こっちは年寄りなんだよ。零細企業の親父なんだよ。
そんな私に向かって、「僕たち、すごいだろうアピール」して何なのよ。分かる言葉で話してよ。あんたら、日本を代表する企業の一員なんだからさ、思いやりというか、いたわりというか、そういう気持ちを持たなくちゃ。人間性は大事だよ。
「今日の議題は資料のとおりで、前回の打ち合わせを踏まえて日程の再調整をしてみたけど、4月当初の新発売は動かせないから、相当厳しい日程になっているわけね。だから、今日中には決定して早急に次の段階に進みたい。(はいはい)。で、障害になっていた人員の件は、部署に新しい要員が加わったから解決した。(ほう、それは良かった)」
ね。こういう言い方もあるんだよ。
「障害」なのか「障碍」なのか。
読み方はどっちも「しょうがい」。
東京パラリンピックを控えて、「碍」という字を常用漢字表に加えようという動きがあったが、見送られたというニュース。
「害」は、「有害」「災害」「被害」「公害」など、あまり良いイメージがないのだが、これは仕方ない。「悪」「危」「犯」などを、イメージが良くないという理由で使わないことにすると大変不便なことになる。
「障害」が一般化したのは戦後のことで(「碍」が常用漢字から外された)、それまでは「障碍」が普通だったようだ。
「碍」は「碍子(がいし)」の「碍」。
日本碍子という有名な会社がある。街の電線を見ると陶器製の絶縁体(小さくて白いやつ)が使われているが、それを作っている会社だ。
「碍」には「さまたげる」という意味があることが分かる。
「害」にも「さまたげる」という意味があるが、「邪魔をする」「傷つける」といった意味合いもあるので、「身体障害」よりも、昔使っていた「身体障碍」の方が当たっているかもしれない。身体に「しょうがい」があることは、自分の行動の妨げにはなるが、それによって他者を傷つけるわけではないからだ。
最近学校の運動会では障害物競走をやらないという話を聞いたことがある。いや、やってはいるのだが「山あり谷あり競争」みたいな呼び方をしている。
誰かが、障害者の差別につながるとか言い出したんだろうが、それはちょっと違うだろう。「障害」は「障害」で、ちゃんと用途があるんだから。
「障害」を元々の使い方である「障碍」に戻すのはいいとして、誰かが差別用語だと言い出すと、それを使った人(特に差別意識なく)が糾弾されるという風潮は困ったものだ。いわゆる「言葉狩り」というやつだね。
言葉を使わなくなったり、言い換えたりしたところで、それで差別がなくなるわけではない。
ユーキャンの新語・流行語大賞の候補(ノミネート30語)が7日発表された。
ユーキャングループの自由国民社が発行する「現代用語の基礎知識」が8日発売だから、その販売キャンペーンだね。
毎年ノミネート発表の翌日が発売日になっている。
興味がある方は各自ググって候補を見てもらおう。
まあ、半分もわからんだろうが、それでいい。
「こんなの聞いたことねえよ。俺って遅れてるのかな。もっと勉強しなきゃ」。
そう思ってくれないと、「現代用語の基礎知識」が売れないでしょ。
でも、先生方みたいな知識・教養レベルが高い人たちは、「知らない」ってことを反省したり、恥じたりしてしまうのだよ。
その気持ちは大事なんだが、これは最初に書いたように一企業の広告・販促(販売促進)だからさ、知らない言葉があっても、「ふ~ん、初耳だぜ」で済ませばいい。
私が向こう側の立場だったら、みんなが、なるほどと納得する言葉の中に、一部の人しか知らない耳慣れない言葉を入れると思うよ。商売、商売。
ところで、教育界の新語・流行語って何だろう。
と、考えてみると、これが意外と思い出せない。
アクティブラーニングなんて、もう何年も前だし。
国際バカロレア。う~ん、これは本格的にはこれからだと思うが、言葉として新しいと言えるかどうか。
大学入試がらみだと割とよく耳にしたのが「eポートフォリオ」かな。
新入試に備えて、生徒が高校生活の活動記録をデジタル化して残すというシステム。生徒が自分で書く調査書(内申書)みたいなもんだろう。今年はかなりの学校が導入したようだ。
今のところ、新大学入試への対応が主な狙いと見られるが、生徒の活動を可視化し、情報を共有化することは悪いことではない。今までの「勘と経験」に頼った進学指導から一歩前進するかもしれない。
ちなみにポートフォリオは金融関係ではかなり昔から使われていたが、私には無関係。資産の組み合わせとか言われたって、資産ないから。
もう一つ。これは一時私がいた業界だが、デザイナーとかカメラマンとか、いわゆるクリエーター系の人々は作品集みたいな意味で自分のポートフォリオを作る場合があった。それを営業や就職面接に持って行ったりする。たぶん、「eポートフォリオ」はこっちの流れかと思うが、正確なところはよく分からない。
本田 半端ないって もう~
アイツ 半端ないって
「清々しい」を「きよきよしい」って読むもん
そんなの出来ひんやん 普通
サッカー本田圭佑選手が「清々しい」を「きよきよしい」と言い間違ったということでネット界隈では大盛り上がり。
でも、これ読めなくてもそんなに恥じゃないから。
初々しい
神々しい
女々しい
忌々しい
瑞々しい
本田選手を笑うなら、せめてこの程度は読めて書けないとね。
しかし、何度か聞いていると、「きよきよしい」もなかなかいいね。流行るんじゃないの。
少なくとも氷川きよしのコンサートでは使えるね。おばさんたちが声をそろえて、「きよ、きよし~」。
本田選手のことを「中学生レベル」とか笑っている生徒がいたら、「じゃあ、お前ら、これ全部読めるんか」と次の漢字を出してあげよう。
稚拙(26.9%)
峡谷(33.0%)
委ねる(79.0%)
均衡(79.5%)
俊敏(87.3%)
諭す(48.2%)
輪郭(78.2%)
旋律(78.2%)
裁つ(89.1%)
以上は、27年度~29年度、埼玉県公立入試国語の漢字(読み)問題。カッコ内は正答率。
尾木ママこと尾木直樹さんが、大学生は「生徒」ではなく「学生」と呼ぶべきであるとご自身のブログの中で述べておられる。
それがヤフーニュースなどに取り上げられていた。
中学高校で教員経験があり、大学でも教鞭をとられた尾木ママさんは、テレビに出演するタレントや司会者が大学生を「生徒」と呼ぶことに違和感を持たれているようだ。
気持ちは分かるな。
私もそういうケースよくあるから。
小学生は「児童」、中高生は「生徒」、大学生は「学生」。
私は教員経験者なので、書いたり話したりする時は、使い分けるようにしている。昔は普通に使っていた「父兄」「父兄会」は「保護者」「保護者会」と言うようにしている。
でも、一般の方にはそれを求めない。
私の中では、これらは専門用語、あるいは業界用語と言うべきものであるから、教育関係者にはきちんと使い分けようぜとは言うけれど、一般の方が使い分けできていなくても、まあしょうがないかなという程度である。
内申書と言われるものがある。
内申書という実物はないのだが、人々は調査書のことをそのように言うので、学校の先生や塾の先生も、それに合わせる。内申書という言葉が出るたびに、いちいち訂正するのも面倒だ。同じものを指しているのがはっきりしており、そこで誤解が生じるわけでもないから、いいではないか。
尾木ママさんの主張は、素人に専門家と同様の用語の使い分けを求めているようで、私はむしろ、そっちに違和感を覚える。