角栄を描いた小説を読んで、田沼意次のことを考えた
昨日は少し時間があったので、石原慎太郎が最近書いた小説『天才』を読んだ。
元東京都知事・石原慎太郎は、芥川賞作家であるから、小説を書くのは、まあ本業と言うべきある。
この小説は、田中角栄の一代記なのだが、「俺は・・・」という形の一人称で書かれている。
登場人物は全部実名で、田中角栄の金権政治を徹底的に批判した石原本人も出てくる。
が、今日はこの本の話ではなく、突然だが、田沼意次(たぬま・おきつぐ)の話である。
実は、土曜日のテレビで、そろそろ入試に出そうな人物として社会担当の先生に番組の中で田沼のことを言ってもらおうと思いながら、つい忘れてしまったことを、田中角栄の本を読みながら思い出したのだ。
田沼意次が老中(ろうじゅう)となったのは1772年のことである。
家康が征夷大将軍となったのは1603年であるから、江戸幕府が開かれてから170年も経っている。
よって、将軍も15代中の第10代目、家治(いえはる)の時代である。
田沼は武士ではあるが低い身分の出である。しかし、努力と才能でみるみる出世し、ついには幕府政治の中枢を担うようになる。
そして、困窮する幕府財政の立て直しを図る。
田沼の政策の特徴は、農業ではなく、商工業者の力を利用して財政再建をしようとしたところにある。だから、重商主義政策と呼ばれたりする。
〇同業組合である株仲間を奨励し、これに特権を与える代わりに税を徴収した。
〇長崎貿易を活発にしようとした。
〇銅の専売制度を実施した。
〇俵物(たわらもの)=海産物など新しい輸出品の開発に力を入れた。
〇蝦夷地(今の北海道)の開発を試みた。
〇印旛沼の干拓を試みた。
いろんなことを、しかも画期的なことをずいぶんやったね。
江戸の三大改革(享保・寛政・天保)と言われるが、これらの改革は、税金(当時は米)を確保するための農業政策が中心で、結果も吉宗の「享保の改革」以外は、あまり芳しくない。
田沼の改革は、これらに匹敵するし、その斬新さでは他を圧しているから、これを含めて江戸の四大改革と言ったほうがいいんじゃないか。
と思うが、そうならないのは、田沼が身分の低い階級の出身ということもあるが、やはり、次に実権を握った松平定信のせいだね。
松平定信は、8代将軍・吉宗の孫だから、将来の将軍候補だったわけだ。しかし、田沼の画策で白河藩に養子に出されてしまう。
「クソ。田沼の野郎、覚えてろよ。俺が将軍になり損なったのはテメエのせいだ。ただじゃおかねえ」
こういう恨みがあるもんだから、田沼に対して徹底的に「わいろ政治家」のレッテルを貼ったわけだ。
で、寛政の改革は、あまり成功しなかったが、こっちは結構うまく行って、昭和に生まれたわれわれも、田沼意次はわいろをもらった悪いやつだと学校で習った。
もっとも、最近の歴史では、田沼も再評価されている。
私が、「田沼、意外といいやつじゃん」と思うようになったのは、学問研究の結果ではなく、池波正太郎(いけなみ・しょうたろう)の「剣客商売」(けんかくしょうばい)の影響だ。
この小説はずいぶん昔からテレビドラマ化されていて、昨年放送された最新版では、主役の秋山小兵衛を北大路欣也、その息子・大治郎を斎藤工、秋山一家を秘かに応援する田沼意次を國村隼、その娘・佐々木三冬を杏というキャストだったが、これはどうでもいい情報だ。
とにかく、この小説では、悪徳政治家ではなく、先見性を持った優れた政治家として描かれているのだ。
というわけで、入試を控えて、ちょっと気になる田沼意次の話であった。
元東京都知事・石原慎太郎は、芥川賞作家であるから、小説を書くのは、まあ本業と言うべきある。
この小説は、田中角栄の一代記なのだが、「俺は・・・」という形の一人称で書かれている。
登場人物は全部実名で、田中角栄の金権政治を徹底的に批判した石原本人も出てくる。
が、今日はこの本の話ではなく、突然だが、田沼意次(たぬま・おきつぐ)の話である。
実は、土曜日のテレビで、そろそろ入試に出そうな人物として社会担当の先生に番組の中で田沼のことを言ってもらおうと思いながら、つい忘れてしまったことを、田中角栄の本を読みながら思い出したのだ。
田沼意次が老中(ろうじゅう)となったのは1772年のことである。
家康が征夷大将軍となったのは1603年であるから、江戸幕府が開かれてから170年も経っている。
よって、将軍も15代中の第10代目、家治(いえはる)の時代である。
田沼は武士ではあるが低い身分の出である。しかし、努力と才能でみるみる出世し、ついには幕府政治の中枢を担うようになる。
そして、困窮する幕府財政の立て直しを図る。
田沼の政策の特徴は、農業ではなく、商工業者の力を利用して財政再建をしようとしたところにある。だから、重商主義政策と呼ばれたりする。
〇同業組合である株仲間を奨励し、これに特権を与える代わりに税を徴収した。
〇長崎貿易を活発にしようとした。
〇銅の専売制度を実施した。
〇俵物(たわらもの)=海産物など新しい輸出品の開発に力を入れた。
〇蝦夷地(今の北海道)の開発を試みた。
〇印旛沼の干拓を試みた。
いろんなことを、しかも画期的なことをずいぶんやったね。
江戸の三大改革(享保・寛政・天保)と言われるが、これらの改革は、税金(当時は米)を確保するための農業政策が中心で、結果も吉宗の「享保の改革」以外は、あまり芳しくない。
田沼の改革は、これらに匹敵するし、その斬新さでは他を圧しているから、これを含めて江戸の四大改革と言ったほうがいいんじゃないか。
と思うが、そうならないのは、田沼が身分の低い階級の出身ということもあるが、やはり、次に実権を握った松平定信のせいだね。
松平定信は、8代将軍・吉宗の孫だから、将来の将軍候補だったわけだ。しかし、田沼の画策で白河藩に養子に出されてしまう。
「クソ。田沼の野郎、覚えてろよ。俺が将軍になり損なったのはテメエのせいだ。ただじゃおかねえ」
こういう恨みがあるもんだから、田沼に対して徹底的に「わいろ政治家」のレッテルを貼ったわけだ。
で、寛政の改革は、あまり成功しなかったが、こっちは結構うまく行って、昭和に生まれたわれわれも、田沼意次はわいろをもらった悪いやつだと学校で習った。
もっとも、最近の歴史では、田沼も再評価されている。
私が、「田沼、意外といいやつじゃん」と思うようになったのは、学問研究の結果ではなく、池波正太郎(いけなみ・しょうたろう)の「剣客商売」(けんかくしょうばい)の影響だ。
この小説はずいぶん昔からテレビドラマ化されていて、昨年放送された最新版では、主役の秋山小兵衛を北大路欣也、その息子・大治郎を斎藤工、秋山一家を秘かに応援する田沼意次を國村隼、その娘・佐々木三冬を杏というキャストだったが、これはどうでもいい情報だ。
とにかく、この小説では、悪徳政治家ではなく、先見性を持った優れた政治家として描かれているのだ。
というわけで、入試を控えて、ちょっと気になる田沼意次の話であった。