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いじめテーマの「沈黙の町で」(奥田英朗)を読んだ

 昨日は午後少し時間ができたので、奥田英朗「沈黙の町で」 (朝日文庫:定価840円)を読んだ。
 中学生のいじめを扱った小説だ。

 いじめを扱った小説としては、川上未映子「ヘヴン」や、宮部みゆき「ソロモンの偽証」などが思い出されるが、今回は奥田作品の話。

 もともとは朝日新聞朝刊の連載小説である(2011年5月~2012年7月)。その後、2013年に単行本として出版され、この度、文庫化された(2016年1月)。

 連載開始時から大きな反響を呼んだそうだが、いわゆる「大津いじめ事件」が全国的に報道されるようになった2012年7月に、やや不自然とも思われる結末で連載が終わった。当初から予定されたものなのか、事件報道と何らかの関係があったのか、そこのところはよく分からない。

 群集劇とか群像劇と呼ばれる手法がとられている。加害者生徒、被害者生徒、同級生、それぞれの家族、中学校の先生、警察官、検察官など、多角的な視点から事件の背景や真相を浮き彫りにして行く。

 学校が舞台となり、先生が多く登場するとなると、経験者である私などはどうしてもディテール(細かい部分)に目が行くため、そこはちょっと違うんじゃないかとか、それはやや不自然だなどと、引っかかりも出てくるが、全体としては、部外者がよくここまで描けるものだと関心するばかりである。

 いじめ被害に遭った生徒をどう描くか。つまり、家庭環境とか性格をどう設定するかは、作者も大いに悩んだところではないかと想像する。
 この作品では、裕福な家庭で跡取り息子として過保護に育てられ、家で「お坊ちゃま」と呼ばれていたことから、同級生に「ちゃま夫」というあだ名をつけられているという設定だ。

 ニュースで知る被害者生徒は、ごく普通の真面目な生徒という印象だが、ここでは、ひ弱なくせに、ちょっと小生意気な生徒が被害者として登場するわけで、その点で多少の違和感を持つ人がいるかもしれない。


 私は、直接中学生の指導に関わる者ではないが、かれらに向けて、情報を発信することを仕事にしている。
 大人ではないが、と言って、完全に子どもかと言うと、そうでもない。たぶん、人生において、もっとも中途半端な時期を生きるかれらに、何をどう伝えるかは日々悩むところである。

 だから私は、この小説を、いじめ撲滅への手がかりを知るためというより、大人と子供の狭間で揺れ動く中学生の心理を知る一冊として、また、自らも経験したが遠い昔のこととして忘れ去ってしまった中学生の日常を思い起こす一冊として読んだ。

 ※訂正:最初、題名を「沈黙の街で」と表記したが、正しくは「沈黙の町で」なのでブログ公開後、訂正した。

 
 

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受験生・保護者の皆さん、学校や塾の先生方に最新情報をお届けします。ただし、結構頻繁に受験と無関係の話も。

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