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本当だったら恐い「塾歴社会」の到来

 私はいっとき出版関係の仕事をしていたので、その頃からの習慣で、必ず本の奥付(おくづけ)をチェックする。
 本の最後の方にある、発行日などを記したページだ。

 昨日読んだのは、おおたとしまさ「ルポ塾歴社会」(幻冬舎新書:定価800円)。
 奥付を見ると、「2016年1月30日第1刷発行」「2016年2月11日第3刷発行」と書いてある。

 新書版の場合、第1刷は通常1万部程度と思われるが、第1刷が出て、それっきりという本も多い中、売れ行きが良かったのだろう。それで、第2刷、第3刷と、すぐに増刷したということだ。

 著者の肩書は、「育児・教育ジャーナリスト」。
 なるほど、こういうのもあったか。

 プロフィールに、「中高の教育免許を持ち、私立小学校での教員経験もある」と紹介している。
 しかし、これは余計だ。教員免許なんて持ってるだけじゃ何の意味もない。中高の免許では小学校において正規の教員として授業を担当することはできないから、非常勤だろう。
 教育は一応分かっているし、現場も知らないわけじゃないというアピールなんだろうが、現職の教員は、こういう経歴に信頼を寄せないから逆効果だろう。

 と言って、私はこの著者を貶めようというのではない。優れた取材力があるんだから、それ一本で、ジャーナリストというだけで、十分に勝負できるだろうと言いたいのだ。

 ちょっとばかり教員経験のある私などは、教員が書いたものはあまり読む気がしなくて、むしろ異分野出身で、先生とは違った視点から教育や受験を語ってくれる人のものを読みたい。
 そういう点では、本書は期待に違わぬ一冊だった。

 サブタイトルに、「日本のエリート教育を牛耳る『鉄緑会』と『サピックス』の正体」とある。
 教育や受験の関係者なら誰もが知る著名塾だ。

 著者は、現職・元職の講師や塾生・出身者はもちろん、保護者や私立中高の先生まで丁寧に取材し、その実像に迫ろうとしている。
 この手の本では、裏で金もらってるんじゃないかと思うほど、ひたすら賛美しまくるものとか、逆に何の恨みがあるのかと思うほど、悪口を言い募るものが多いものだが、本書には、そういった偏りはない。

 筆者の分析や主張には、共感できる部分は多いのだが、一つだけ挙げておこう。 
 本書の最後の方で、著者はこう述べている。(以下引用)

 「塾歴社会」の取材を終えた私個人の率直な感想は、「できる子はできる。できる子はできる子同士で集まる。『普通の子』は無理しすぎないように」である。
 そして、「塾歴社会」がさらに進行した場合、私がいちばん気になるのは「普通の子」が困ることである。(引用終わり)

 

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受験生・保護者の皆さん、学校や塾の先生方に最新情報をお届けします。ただし、結構頻繁に受験と無関係の話も。

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