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議会政治の国が、なんで国民投票やった

 世間の関心は、イギリスのEU離脱で世界経済はどうなる? 日本経済への影響は?という方向に行っているようだが、私が引っかかっているのは国民投票のほうだ。

 日本では、憲法改正についてだけ国民投票の規定があって、他の事案に関して国民投票を行うことは想定していない。
 だから、たとえば、「原発を続けるか、続けないか」とか、「日米安保条約は存続するか、廃棄するか」みたいな形で国民投票が行われることはない。

 アメリカには国民投票の制度がない。イギリスにもなかったが、例の1973年のEU加盟を承認するかどうかのときに国民投票を行うことになり、それで法律を作った。

 ヨーロッパで一番、ということは世界で一番と言っていいと思うが、もっとも多く国民投票を行っている国はスイスである。ヨーロッパ全体でこれまで800回ぐらいの国民投票が行われてきたが、そのうち6割~7割はスイスで行なわれたものだ。
 国民投票大好き、スイス人。
 議会だってあるのに、いちいち細かいことまで国民投票をやるのでは、金も手間もかかって仕方ないだろうと思うが、この国は、どこの国とも同盟を結ばず、国を守るためには、国民一人ひとりが武器をとって戦うぞという方針であるから、国民の結束を図るには、こうした方法が良いと考えられているのかもしれない。
 人口が800万人ぐらいの小さな国だから出来るとも言える。ちなみに、わが埼玉県の人口は約720万人。

 議会政治は間接民主制。国民投票は直接民主制。
 さて、どっちがいいか。

 ここ200~300年の歴史を見れば、議会政治が主で、場合によっては、ちょっとだけ国民投票を入れてもいいかな。あるいは国民投票は別になくてもいいかな。というのが、世界の判断である。スイスは例外だ。

 たしかに、国民投票は民主主義の一つの形であるが、どんなに複雑な問題であっても、マルかバツかの二者択一にしなければならない。

 今回のイギリスでも、「移民のことを考えると離脱がいいが、国民経済全体を考えると残留がいい」とか、「さしあたり残留だが、将来は離脱も選択肢だ」といった主張は考慮されず、今すぐどっちかを選べとなっている。
 これが本当にいいことなのか。

 また、国民投票は完全多数決である。大差だろうが僅差だろうが、少数となった意見は全否定されるということである。
 それでいいのか。

 イギリスでは昨年、下院(庶民院)の総選挙があり、予想をくつがえしてキャメロン首相率いる保守党が圧勝した。
 ただそのときの公約に、国民投票の実施があった。

 しかし、世界でもっとも長い議会政治の歴史を持つ国が、何だって国民投票なんてやったのかな。そこが謎だ。

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受験生・保護者の皆さん、学校や塾の先生方に最新情報をお届けします。ただし、結構頻繁に受験と無関係の話も。

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