小説文の読解に苦戦した私である
小説の読解に苦戦した。
受験生はどうか知らんが、私は苦戦したのである。
29年度埼玉県公立入試「国語」大問1。
NHK全国放送コンテストの締め切りを目前に控えた高校3年生、放送部員・宮本知咲のゆれ動く心。
問1 薄っぺらな文庫本を片手に、揺れるつり革をぼんやりと眺める。とありますが、このときの「私」の心情を説明した文として最も適切なものを、次のア~エの中から一つ選び、その記号を書きなさい。(4点)
ア 朗読したシーンは見つかっているが、Nコンに参加するかどうかで迷っている。
イ 指定作品を何度読んでも、自分が発表する読みたい部分が決まらず悩んでいる。
ウ 昨年も同じ指定作品に蛍光ペンで線を引いたことを、なつかしく思い出している。
エ 自分が発表したいと思う場所を、どうやって時間内に収めようかと苦心している。
小説読解問題の定番である主人公の心情(気持ち)を問う問題だ。
傍線部の前後を読めばだいたい分かることになっている。
傍線部の直前に「私は何をしたいんだろう」とあるので、「私」は自身の行動を決めかねているのだと想像できる。迷っているのだ。
傍線部の直後に「去年の私もこうやって指定作品に蛍光ペンで線を引いた。(中略)だけど、結局私が舞台に立つことはなかった」とあるので、そうか、去年は準備したが出なかったんだなと分かる。
さあ、このあたりから、主人公「私」の心情をくみ取らなくてはならないのだが、私の読解力では無理。
そこで、選択肢に頼る。
細かい説明は省くが、イ・ウ・エにあたるような内容が見当たらない。となると消去法でアだ。「参加するかどうかで迷っている」の部分には引っかかるが、これしかないからアというわけ辛うじて答えにたどりついたのであった。
問3も苦労した。
問3「原稿の端を握ったままの唯奈は、私が添削した部分を嬉しそうに何度も指でなぞっていた。とありますが、これと同じ唯奈の心情が、比喩を用いて表現されている連続する二つの文を本文中から探し、最初の文のはじめの五文字を書き抜きなさい。(4点)
ヒントは比喩表現だ。それと、連続する二文ということ。内容的には、唯奈は主人公の「私」がしてあげたことを喜んでいる。あるいは唯奈が主人公の「私」を尊敬し、慕っていることが分かる部分を探せばいい。
これだけ材料があれば、答えはすぐに見つかりそうなものだが、なかなか見つからない。なんと30行さかのぼると、「私の名前を、彼女は大切そうに何度も紡いだ。宝物だと言ってガラクタを抱きしめる、幼い子供みたい」という文章が発見される。これだ。条件がすべてそろっている。でも、離れ過ぎだろう。
問4も苦しんだ。
問4「ストレートな感情をぶつけられ、一瞬息が詰まった。とありますが、これは、「私」がどのような唯奈の変化に気が付いたからですか。次の空欄にあてはまる内容を、本音、苦手の二つの言葉を使って、35字以上、45字以内で書きなさい。(6点)
反射的に、使わなければならない、「本音」と「苦手」の2つの言葉を本文から探す。出てこない。なかなか出てこない。
34行さかのぼると、ようやく「私、昔から自分の気持ちを伝えるのが、その、苦手で。~」という部分にたどりつく。
本音という言葉は本文からは見つからない。
だが、傍線部から10行前あたりから、「~先輩に会えたから、放送部に入って良かったなって、本気で思ってるんですから」とか、「私、意気地なしだから、誰かから優しくされるのを待っちゃうんです。(中略)なんかうまく溶け込めなくて、だからスタジオとかでは一人で練習してたんです」といった、唯奈の心情を吐露(とろ)するセリフが続く。
これらをまとめると、『自分の気持ちを伝えるのは苦手だと言った唯奈が、私には本音を伝えられるようになっていること(に気が付いたから)』という、模範解答(県発表)に何とかたどりつく。
話が長くなったが、記号選択である問1と問5は割と簡単に正答にたどりつけるが、記述の問2・問3・問4は、傍線部のかなり前の方までさかのぼらないと、正答にたどりつけないので解くのに時間がかかる。
はたして受験生はどうだったか。
以上、実際に解いてみての感想である。
受験生はどうか知らんが、私は苦戦したのである。
29年度埼玉県公立入試「国語」大問1。
NHK全国放送コンテストの締め切りを目前に控えた高校3年生、放送部員・宮本知咲のゆれ動く心。
問1 薄っぺらな文庫本を片手に、揺れるつり革をぼんやりと眺める。とありますが、このときの「私」の心情を説明した文として最も適切なものを、次のア~エの中から一つ選び、その記号を書きなさい。(4点)
ア 朗読したシーンは見つかっているが、Nコンに参加するかどうかで迷っている。
イ 指定作品を何度読んでも、自分が発表する読みたい部分が決まらず悩んでいる。
ウ 昨年も同じ指定作品に蛍光ペンで線を引いたことを、なつかしく思い出している。
エ 自分が発表したいと思う場所を、どうやって時間内に収めようかと苦心している。
小説読解問題の定番である主人公の心情(気持ち)を問う問題だ。
傍線部の前後を読めばだいたい分かることになっている。
傍線部の直前に「私は何をしたいんだろう」とあるので、「私」は自身の行動を決めかねているのだと想像できる。迷っているのだ。
傍線部の直後に「去年の私もこうやって指定作品に蛍光ペンで線を引いた。(中略)だけど、結局私が舞台に立つことはなかった」とあるので、そうか、去年は準備したが出なかったんだなと分かる。
さあ、このあたりから、主人公「私」の心情をくみ取らなくてはならないのだが、私の読解力では無理。
そこで、選択肢に頼る。
細かい説明は省くが、イ・ウ・エにあたるような内容が見当たらない。となると消去法でアだ。「参加するかどうかで迷っている」の部分には引っかかるが、これしかないからアというわけ辛うじて答えにたどりついたのであった。
問3も苦労した。
問3「原稿の端を握ったままの唯奈は、私が添削した部分を嬉しそうに何度も指でなぞっていた。とありますが、これと同じ唯奈の心情が、比喩を用いて表現されている連続する二つの文を本文中から探し、最初の文のはじめの五文字を書き抜きなさい。(4点)
ヒントは比喩表現だ。それと、連続する二文ということ。内容的には、唯奈は主人公の「私」がしてあげたことを喜んでいる。あるいは唯奈が主人公の「私」を尊敬し、慕っていることが分かる部分を探せばいい。
これだけ材料があれば、答えはすぐに見つかりそうなものだが、なかなか見つからない。なんと30行さかのぼると、「私の名前を、彼女は大切そうに何度も紡いだ。宝物だと言ってガラクタを抱きしめる、幼い子供みたい」という文章が発見される。これだ。条件がすべてそろっている。でも、離れ過ぎだろう。
問4も苦しんだ。
問4「ストレートな感情をぶつけられ、一瞬息が詰まった。とありますが、これは、「私」がどのような唯奈の変化に気が付いたからですか。次の空欄にあてはまる内容を、本音、苦手の二つの言葉を使って、35字以上、45字以内で書きなさい。(6点)
反射的に、使わなければならない、「本音」と「苦手」の2つの言葉を本文から探す。出てこない。なかなか出てこない。
34行さかのぼると、ようやく「私、昔から自分の気持ちを伝えるのが、その、苦手で。~」という部分にたどりつく。
本音という言葉は本文からは見つからない。
だが、傍線部から10行前あたりから、「~先輩に会えたから、放送部に入って良かったなって、本気で思ってるんですから」とか、「私、意気地なしだから、誰かから優しくされるのを待っちゃうんです。(中略)なんかうまく溶け込めなくて、だからスタジオとかでは一人で練習してたんです」といった、唯奈の心情を吐露(とろ)するセリフが続く。
これらをまとめると、『自分の気持ちを伝えるのは苦手だと言った唯奈が、私には本音を伝えられるようになっていること(に気が付いたから)』という、模範解答(県発表)に何とかたどりつく。
話が長くなったが、記号選択である問1と問5は割と簡単に正答にたどりつけるが、記述の問2・問3・問4は、傍線部のかなり前の方までさかのぼらないと、正答にたどりつけないので解くのに時間がかかる。
はたして受験生はどうだったか。
以上、実際に解いてみての感想である。