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公立OB校長のあるある、「今、授業見に行ってます」

 公立高校の校長経験者が、定年後、私立高校の校長に招かれるケースがある。
 埼玉には50校弱の私立高校があるが、常に10人程度は公立OBの校長だ。
 なぜ、そのようになるか。
 これは結構生々しい話でもあるし、いろんな大人の事情がからんでいるので、ここで詳しく述べることはしない。

 そこで今回は、公立OB校長のあるある。
 「やたら、授業を見たがる」。

 学校が提供する最大のサービスは、学習指導、すなわち授業であるから、ここに関心を寄せるのは当然だ。教員の力量を測るという点でも、授業を見るのが手っ取り早い。よって、時間があれば、各先生の授業を見に行くという姿勢は、別に間違いというわけじゃない。かく言う私も、民間人としてはトップレベルの「授業ウォッチャー」を自認しているので、年中、学校に行っては「授業見せて下さい」とお願いしている。

 公立の校長は、自らの関心という以上に、職務として授業をチェックする必要があるので仕方ないが、OBとなり私立に転じても、なかなかそのクセが直らない。
 いや別に、授業を見るのをやめろと言っているわけじゃあない。どんどんやっていい。

 だが、私立の校長になったら、授業を見ることと同じくらい、もしくはそれ以上に大切な仕事がある。
 それが生徒募集だ。

 たとえば早稲田や慶応のような知名度とブランド力があれば、話は違ってくるが、そうではない、特に新興勢力の私立にとって、生徒募集がもっとも重要な仕事になるのである。そして、校長はその先頭に立たなければならない。「係に任せてます」ではダメなのだ。

 埼玉県私立中高協会会長の小川義男先生(狭山ヶ丘校長)はかつて、「私立の校長は、いくさで言えば中隊長みたいなもんだ。真っ先駆けて突進し、一番先に敵の弾に当たって死ぬんだよ。その覚悟が無いと部下はついて来んだろう」と仰られた。
 それを聞いて、今の時代、いくさとか中隊長はまずいから中小企業の社長ぐらいにしておいたほうがいいんじゃないですかと言おうと思ったが、まだ若かった私は、相手と格が違い過ぎて、その場では言えなかった。

 私と同い年で、10年間にわたり春日部共栄高校の校長を務められた矢口秀樹先生(現在は東京・藤村女子校長)は、「募集はすべてに優先する」が口ぐせだった。説明会は校長の独演会だった。

 人を生かすこと、組織を機能させることは重要なことで、生徒募集においてもこの原則は生きるわけだが、その上で校長は、ある時は学校の顔、広告塔になり、先頭を走るという発想を持ってもらいたいものである。

※予告
2018年元日からブログタイトルを「梅野弘之の先生応援ブログ」に変更します。
わが社の有能な書き手(ライター)である「H.I」に意見を求めたところ、
「教育一日一論」なんてどうかと言ってきた。
その手もあったかもしれない。

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ありがとうございました

昨年度、息子の高校受験のことがなかなかわからなくて困っていた時に、こちらのブログに出合いました。
子供が高校に入学するまで、と思って見始めたのですが、教育関連のみならず、新聞やテレビのニュースなどから先生が感じられたことなどを独自の切り口で論じられていらっしゃって、なかなかやめられなくなりました。

とても勉強になりました。

これからも、先生方や教育に関わる方を叱咤激励!する切れ味の鋭いブログを楽しみにしています。
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梅野弘之

Author:梅野弘之
受験生・保護者の皆さん、学校や塾の先生方に最新情報をお届けします。ただし、結構頻繁に受験と無関係の話も。

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