「老人の取扱説明書」とはふざけたタイトルだが

ふざけたタイトルだ。
「老人の取扱説明書」だと。老人をモノと一緒にするんじゃねえ。
とか言いながら、思わず手に取ってしまうのだよ。編集者、タイトルの付け方うまいね。
本の売れ行きはタイトル(書名)で決まる。
タイトルはふざけているが、著者は眼科医で、中身は至極真面目なものだ。
私はこの本を、77歳の友人に贈ってやろうと思って購入したのだが、その前にざっと目を通しておこうと読み始めると、まあ、出るわ出るわ、自身に思い当たる現象がこれでもかと紹介されているではないか。
―老人が都合の悪い話を聞こえないふりをするのは、本当に聞こえてない可能性がある―
老人になると高い音が聞き取れなくなるそうだ。若い女性の甲高い声がダメなんだって。
そう言えば最近、彼女らの会話は、ただの雑音にしか聞こえなくなっている。それでいいけど。
-名前を思い出せないのは、たくさんの人を知っているからだ―
そうなんだよ。長く生きてると何千、何万という人に会っているから、それでなかなか思い出せないんだ。知り合いが同級生ぐらしかいないガキどもとは違うんだよ。
-料理に醤油やソースをガボガボかけるのは、塩味に鈍感になっているからだ―
老人が若者と同じ味覚を感じるためには、若者の12倍ぐらいの塩分が必要なんだって。こりゃ恐ろしい。
「最近は、薄味が好みになってねえ」なんて言ってるが、実は、薄味に感じっちゃってるだけかもしれない。気をつけよう。
老人の不可解な行動や、はた迷惑な行動にも、ちゃんとした医学的な理由があるわけだ。
この本は、取り扱う側である若い人たちの参考書になると思われるが、取り扱われる側であるわれわれ老人にも大いに役立つものである。