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平時に危険を察知し、行動を起こすことは難しい

 ある学校に新しい校長先生が赴任してきました。校長先生は学校中を見回ると、「プールの傍のブロック塀は危険だから取り壊したほうがいい。地震で倒れたら大変なことになる」と言い出しました。
 すると前からいるベテランの先生が、「あの塀はただの塀じゃないんですよ。校長先生も壁画を見たでしょう。あれは卒業生たちが記念に残した壁画なんですよ。取り壊すなんてとんでもない」と反論しました。
 また、別の先生は、「子供たちの思い出が詰まった塀を壊すなんて、校長先生はそれでも教育者ですか。6年間通った証を何かに残そうと子供たちと話し合って、何日もかけて描いたんです。子供たちの誇りなんです」と涙ながらに言いました。
 さらにまた、別の先生は、「危険だという根拠が何かあるんですか。あるんだったら、まずそれを示してください。来たばかりの校長先生の最初の指示が塀を壊せだなんて信じられません。卒業生だけじゃありません。在校生や保護者にも説明できませんよ」と、強く異論を唱えました。
 赴任したばかりの校長先生は、先生方の強い反対にあって、諦めることにしました。
 3年後、校長先生は別の学校に転勤になり、また新しい校長先生がやって来ました。この校長先生も「犠牲が出てからでは遅い」と、強硬に取り壊しを主張したところ、今度はどこで聞きつけたか新聞社が取材に来ました。数日後、『思い出の壁守れ』という記事が出ました。それで校長先生は断念しました。
 そしてさらに3年後… 

 って、切りがないないから架空の物語はこの辺にしておくが、平時は難しいんだよ。

 東京・武蔵野市のある小学校がブロック塀を取り壊したというニュースが流れていた。15年前に卒業児童が壁画を描いたという。その時は倒れる危険は考えなかったということだ。7年前の東北大震災のときは、倒壊の危険性について議論されなかったのか。されたとしてもそのまま残ったのだから、「思い出」が優先されたのだろう。

 私はたまたまニュースで取り上げられたこの小学校を責める目的で書いているのではない。
 架空の物語における先生方の発言は、恥ずかしながら若いころの私の考えそのものである。つまり反省文だな。

 平時に危険を察知し、行動を起こすことは難しいが、校長先生も先生方も、今こそ勇気をもって断行していただきたい。

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受験生・保護者の皆さん、学校や塾の先生方に最新情報をお届けします。ただし、結構頻繁に受験と無関係の話も。

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