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「うちは今のところ特に大きな問題はない」、それ危険です

 家具販売大手・大塚家具で、創業者であり父の大塚勝久会長と長女の久美子社長との間で経営権をめぐり壮絶なプロキシファイト(委任状争奪戦)が行われたのは3年ほど前のことだ。
 結局、長女側が勝利し、会社を追われた父は創業の地・春日部に別会社(匠大塚)を設立した。まあ、親子喧嘩だね。

 長女は、父の高級路線を完全否定し、ニトリやイケアのような中級カジュアル路線を選んだ。
 って、この時点で、われわれのような素人だって「今さら手遅れでしょう」と思ったものだが、案の定うまく行かず、今、経営危機に瀕している。頭はそこそこ良さそうだが社長のお嬢様(一部では「家具屋姫」と揶揄されているようだ)というだけで社長になったんだから、そうなるだろう。

 さて、われわれはここから何を学ぶかだが、まず「お坊ちゃま・お嬢様は勘違いしやすい」ということ。
 あんたがトップに立ったのは努力の結果じゃないよ。能力を評価されてのものじゃないよ。ということは、周りは全部見えているのだが、本人だけが分かっていない。
 がしかし、勘違いは誰にでもあるものだ。むしろ、そういう環境を作ってしまった親の責任だろう。親も勘違いしていると言っていい。
 中には、出だしはただのお坊ちゃま・お嬢様であっても、親も顔負けの努力を重ね本物の経営者にのし上がる人もいるが、大塚家具の場合はそうはならなかった。

 次に経営戦略だが、ここが一番の問題だ。
 なぜ、わざわざ激戦区(レッドオーシャン)に飛び込んで行く。
 先行者が常に100%有利とは言えないが、それに対抗する後発者が「気軽に入れる店づくり」だけではね。そんなのとっくにニトリが実現しちゃってますよ。
 同じ春日部創業の箪笥屋さんとしては島忠が有名だが、今は島忠家具よりも島忠ホームセンターの方が知られている。と言って、今さらホームセンター方面に進んでも、そっちも激戦区だ。

 少子高齢化が進み、家具需要は激減。住宅事情や価値観の変化で家具は「耐久消費財」から「消耗品」へ。
 戻るも地獄、進むも地獄。

 ただ、ここで考えておかなければいけないのは、父を追放した時点で、売上高・営業利益ともに減少が続いていたものの100億円を超える現預金があり、銀行からの借り入れのなしの無借金経営だったことだ。
 つまり、まだまだ余裕があった。

 ここだね。
 余力があるうちにいろいろと手を打っておけ。

 身に覚えがあるけど、うまく行っているときは、どうしてもこのままでいいと思ってしまうんだよ。
 どんなに順調な商売だって、いずれ伸び悩む、いずれ躓く。でも、躓いてからじゃ手遅れなんだ。

 「うちは今のところ特に大きな問題はない」
 そこ。そこですよ。
 その後に続くのは、「だから、大胆な挑戦をするのは今しかない」とならないと。

 クソっ、それに気づくのが遅かった。


 追記:大塚家具の件、キッチリ分析され、かつ大変分かりやすいブログがありましたので紹介しておきます。(8月11日)

 「大塚家具もパイオニアもビジネスモデルが今の時代に合わなくなっただけの話」

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受験生・保護者の皆さん、学校や塾の先生方に最新情報をお届けします。ただし、結構頻繁に受験と無関係の話も。

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