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答えは質問の中にある

 質問力。大事ですね。

 先生としては、自ら質問してくる生徒に教えるのは難しいことではない。
 かれらには「分かろう」「分かりたい」という気持ちがある。そして、質問する段階で、すでに考えている。ここが大事。
 さらに、考えた結果、質問の中にすでに答えがある。

 2017年12月15日のエントリー「『ブラック校則』って、簡単に言われても困るな」に対する読者の方からのご質問。
 「少しわからないところがあったので教えていただきたいと思い、コメントいたします。
この記事の>やむにやまれぬ事情から、「くだらねえ校則」を強いているのだ。にある「やむにやまれぬ事情」とは、具体的にはどのようなことでしょうか」

 回答を先に言っておきます。
 ご質問にある「具体的にどのようなことでしょうか」。これがキーワード。と言うか、ほとんどこれが答えです。

 先生の中に、校則は「多い方がいい」、「細かいほどいい」、「厳しいほどいい」と考えている人は、まずいない。無しで済ませられればそれがベスト。あったとしても、少なくて、大ざっぱで、ユルーイほうがいい。そう思っている。
 月1回、全校生徒を集めて頭髪服装検査なんて、生徒も嫌だろうし、先生だって面白くない。

 では、なぜ校則が「多く」「細かく」「厳しく」なって行くか。
 「具体的にどのようなことでしょうか」に、いちいち答えようとするからだ。と言うより、答えざるを得ないからだ。

 まず先生方自身の問題点。
 「最近、生徒の服装が乱れているようなので、それぞれ注意してください」。
 これで済めばいいが、「乱れというと、具体的には?」と質問してくる先生がいる。毎日見てりゃ分かるだろ。
 「それは、各先生のご判断で」と言えば、「いや、統一性が必要でしょう。担任ごとバラバラはまずいでしょう。明確な基準がないと…」と来る。
 別に先生ごとに多少のズレがあっても構わないと思うが、基準がないと指導できないって言うなら、仕方ない、作ってやるか。
 
 生徒が言う。
 「スカートが短いっていうけど、じゃあ、膝上何センチまでならいいんですか?」
 そんなの大体でいいだろう。と思うが、そこまで言うなら仕方ない。数字で決めてやるか。

 親が言う。
 「派手な色はダメって言われても分からないから、何色と何色がOKなのか学校でちゃんと決めてください」
 それも各自の判断でいいだろう。と思うが、そこまで言うなら仕方ない。色を指定するか。


 ある時、廊下を走り回る生徒が大勢いた。ついにぶつかって怪我人が出た。
 若いころの私だったら向こうから走ってくるやつらにラリアットでも食らわしてやるところだが、今そんなことをしたら一発でこっちの首が飛ぶ。
 「危ないから廊下を走り回るんじゃない。静かに歩け」。これがたぶん正しい指導だが収まらない。仕方ない。「廊下を歩くときは右端を縦一列で無言で歩くこと」を定めよう。「追い越し禁止」も加えとくか。

 みんなが、具体的に、基準を定め、数字で表わさないと理解できない、納得できないって言うから、校則という形で明文化せざるを得ないんですよ。
 で、そのうちに、決めたとき当事者だった先生は異動し、生徒も卒業し、保護者も入れ替わって、あとに校則だけが残る。

 「自分で判断しろ」とか「常識で考えろ」と言えば済む生徒もいるが、そうではない生徒もいる。親にもいる。
 なぜそうしなければならないか。なぜそうしてはいけないか。言葉を尽くして説明し理解を求めるのが筋だが、それが通じない生徒も残念ながらいる。そこで、不本意ながら「それが規則だから」という奥の手を使う。先生として敗北感、無力感を感じる場面でもあるわけだけどね。

 ということで、質問者さん。少しは理解が深まりましたか。

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No title

わざわざ新しい記事を作ってまで質問に答えていただき、誠にありがとうございます。
「学校」というものの裏側を覗けたような気がして、ちょっとした冒険心を感じました。
ところで

> で、そのうちに、決めたとき当事者だった先生は異動し、生徒も卒業し、保護者も入れ替わって、あとに校則だけが残る。

というのは、恥ずかしながら私の会社でもよくあることで、「何故こんな手順を踏むのだろう?」というルールがしばしば。
そこで3年に一度でも、先生方で(あるいは保護者も含めて)校則を見直す機会を作るのは難しいのでしょうか。
そうすれば「くだらねえ校則」の幾つかはなくなるような気もするのですが。
そもそも先生方は忙しくて、それどころではないかもしれませんが。
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梅野弘之

Author:梅野弘之
受験生・保護者の皆さん、学校や塾の先生方に最新情報をお届けします。ただし、結構頻繁に受験と無関係の話も。

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