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靖国神社の何が問題なのか(後編)

 靖国神社が、明治以来の戦死者を祀る神社であることを前編で述べた。
 いま「靖国問題」などと言われているが、私の若い頃は(1970年代あたりまで)、そのように呼ばれる問題はなかったことも述べた。

 1985年、時の総理大臣・中曽根康弘が首相として公式参拝し、それに中国が反発した。どうもこのあたりが「靖国問題」の始まりではないかと思われる。
 それに先立つ1978年、太平洋戦争におけるA級戦犯が靖国神社に合祀(ごうし)された。合祀とは他の戦死者らと一緒に祀られたということである。このことは、最初は関係者以外知るところではなかったが、翌年、朝日新聞が取り上げたことで明らかになった。
 ただし、この時点では、大きな問題として騒がれることはなかった。

 中国、のちに韓国が、日本の政治家の靖国参拝を批判するようになった理由の一つは、前述したA級戦犯の合祀である。

 そこで、A級戦犯とは何かを知らなければならない。

 太平洋戦争が終結し、日本はアメリカを中心とする連合国により占領された。
 終戦の翌年、昭和21年5月から約2年半にわたり、極東国際軍事裁判というものが行われた。東京裁判とも呼ばれる。
 戦犯(戦争犯罪人)を裁くための裁判であるが、戦争が終わった後、このような裁判が行われたのは史上初めてのことである。
 この時、多くの軍人らが被告として裁判にかけられたのだが、罪の種類によってA級・B級・C級の3つに分類された。罪の重さではなく、罪の種類である。よく、罪の重い順と誤解する人がいるが、そうではない。

 A級戦犯の容疑は、「平和に対する罪」である。
 
 裁判で人を裁くには、法律が必要である。どの法律のどの部分を犯したか、それを裁くのが裁判だ。
 では、A級戦犯を裁くための根拠となる法律は何だったか。
 実はこれが存在しなかった。
 
 そこで、連合国側は、急きょ極東国際軍事裁判条例という法律のようなものを作り、これを根拠に裁くことにした。
 しかし、裁判には、遡及(そきゅう)処罰の禁止、あるいは事後法の禁止という大変重要な原則がある。
 つまり、後から法律を作って、それによって処罰してはいけないという考え方である。

 この原則にしたがえば、この裁判は、戦争が始まった時点では存在していなかった法律によって裁くことになるから、東京裁判そのものが不当であるとの主張が成り立つ。
 また、日本が受け入れたポツダム宣言の中に、「一切の戦争犯罪人に対しては厳重な処罰を与える」とあるから、これが根拠となるという主張もあるが、これとて終戦の直前のことであるから、これによって、さかのぼって戦争を始めた罪を問うのは無理がある。

 いずれにしても、この裁判は、今日われわれが普通に考える裁判とはかけ離れており、裁判という形式をとった敗戦国日本に対する制裁という意味合いが強いものであった。

 A級戦犯となった人々のうち7人は、裁判の結果、絞首刑に処せられた。
 7人のうち、よく知られているのは、開戦時の首相であった東條英機、それより以前に首相であった軍人ではない広田弘毅である。

 靖国神社には、絞首刑となった7人を含む14人が合祀されており、これが後の「靖国問題」の発端となる。
 合祀されたのは1978年であり、その後6年間に、大平正芳・鈴木善幸・中曽根康弘の各首相が靖国参拝をしているが、これに対して中国が抗議することはなかった。大平・鈴木の両首相も中国を訪問し歓迎を受けている。つまり、日中の関係は、A級戦犯が合祀されても、首相が靖国参拝しても良好だったのである。

 いま、首相の靖国参拝こそが、日中間の関係を悪くしているように言う人がいるようだが、それはどうも歴史的な事実を踏まえていないように思える。

 いろいろ調べてみると、1985年の中曽根首相の参拝あたりから、朝日新聞がこの問題を大きく取り上げるようになり、これに呼応する形で、中国がこの問題を外交上のカードとして利用するようになったというのが実際のところであるようだ。
 いわゆる「従軍慰安婦問題」にしろ、「靖国問題」にしろ、中国や韓国との関係をこじれさせるのが朝日新聞の方針とみえる。困った新聞だ。

 以上みてきたように「靖国問題」は作られた問題と思えるが、戦争が肯定的に見られたり、美化されたりするのは、警戒すべき風潮であるから、ここはしっかり注意して見て行かなければならない。
 靖国神社に行ったことのある人は、おそらく目にしたことがあると思うが、軍服姿で参拝したり、「天皇陛下万歳」と叫んだりする一団が必ずいる。
 ここは、そういう場所じゃないんだよ。

 

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受験生・保護者の皆さん、学校や塾の先生方に最新情報をお届けします。ただし、結構頻繁に受験と無関係の話も。

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