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表現力とは何かを考える(後半)

 昨日の続き。

●身につく場面は限られている。
 ここでもう一度、話を整理する。
 「表現力」の基になるのは、ある事柄について、意識して「考える力」だ。考えるときの道具は、言葉だ。そして、言葉を組み立てて、誰にでも正確に自分の考えを伝えられるように文章化する。これが「表現力」である。

 さて、ここまで来たら、受験生の皆さんとしては、どうしたら「表現力」が伸ばせるかを知りたいだろう。
 その話に移ることにする。

 「表現力」の基になるのは、意識して「考える力」だという話をした。つまり、何となくでは駄目で、「よし、これから○○について考えるぞ」という命令を、自分の脳に発信した上で、そのことだけを集中的に考えるという作業をしなければならない。その間、ほかのことを考えてはいけない。
 歩きながら、とか、自転車に乗りながら、というのは、考えることに集中できないので、この作業には適さない。それに危険だ。やはり、机の前に座って、考えついた言葉をすぐにメモできるような場面設定が一番適している。

●授業以外でそれを伸ばすのは不可能。

 そうすると、皆さん、もうお分かりだろう。一つの結論が出てくる。学校の授業中だ。あるいは、自宅での家庭学習の時間だ。これ以外の場面で「表現力」を伸ばすのは、ほとんど不可能と言っていい。

 たしかに、特に意識しなくても自然に身につく力というものもある。その点では、「日頃から、ものごとを深く考える習慣を身につけましょう」といったアドバイスも、一概に間違っているとは言えないわけだが、今は入試の学力検査で求められる「表現力」の話をしている。それには、はっきりとした目的意識を持った上で、継続したトレーニングを行う以外に方法はないのである。

●この瞬間、伸ばせるかどうかが決まる。
 学校の授業は、皆さんに考えるきっかけを与えてくれる。授業は、そのためにやっていると言っていいくらいだ。
 先生は、皆さんに質問を投げかける。それが合図だ。「さあ、考えてみよう」とストレートに言う場合もあれば、「なぜなんだろう」とか「理由は分かるかな」といった問いかけの場合もあるだろう。どちらにしても、この瞬間が、「表現力」を伸ばせるかどうかの分かれ道だ。この時に、一生懸命に考えてみる人が「表現力」を伸ばせる人である。

 さらに先生は、「ノートに書いてみよう」と言うかもしれない。指名して発表させるかもしれない。ここも分岐点だ。多少自信がなくても、自分の言葉で書いてみる。恥ずかしがらずに発表してみる。それをやった人が「表現力」を伸ばせる人である。

●話し合いは、伝える力を伸ばす。
 授業中、黒板を写したりする必要もあるだろう。家での復習やテスト前の勉強を考えれば、欠かせない作業ではある。ただし、これは「考える力」や「表現力」を伸ばすことにはつながらない。黒板に言葉で表現したのは、皆さんではなく先生だからだ。

 一体、皆さんのノートには、先生が黒板に書いた以外のことが、どれだけ書かれているだろうか。「表現力」を伸ばすために費やされたエネルギーは、もしかしたら、その分量で測れるかもしれない。

 最近の授業では、グループで話し合うスタイルが取られることも多いようだが、あるテーマについて、意見を述べ合うという場面は、「表現力」に磨きをかける絶好のチャンスと言える。

 一日6時間、週5日間。「考える力」や「表現力」を伸ばす時間は、こんなにたくさんある。何か特別なことをやるより、まずは、これを生かすことを考えるべきだろう。

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受験生・保護者の皆さん、学校や塾の先生方に最新情報をお届けします。ただし、結構頻繁に受験と無関係の話も。

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