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とりあえず「報道声明」を出したので、この際国連について考えてみた

 国連・安保理が、湯川氏殺害についてイスラム国を強く非難するとの報道声明を出した。

 報道声明というのは、文字通りプレス向けの発表である。これがもう少し強くなると「安保理(議長)声明」、さらには「安保理決議」となる。
 したがって、これをもって、国連が直ちに何らかのアクションを起こすというものではない。

 さて、この際だから、国連というものについて、ちょっと考えてみようと思う。

 国連は第二次世界大戦後の1945年に設立された。
 国連の英語表記は「United Nations」である。
 第二次世界大戦における「枢軸国(ドイツや日本)」に対し、英仏などは「連合国」と称したが、この英語表記も「United Nations」であり、それがそのまま使われた。

 つまり、国連は第二次世界大戦の戦勝国によって作られた組織である。
 敗戦国日本の加盟が認められたのは、設立後10年以上たった1956年である。
 (※このあたりは、入試でも出題されている)

 なお、ドイツの加盟は1973年。
 韓国は1991年。日本では「永世中立国」として名高いスイスは2002年と、つい最近だ。

 国連憲章には「敵国条項」というものがある。
 すでに死文化していると言われるが、国連分担金2位の日本と、3位のドイツがいまだに敵国扱いというのもおかしな話である。

 国連では、総会よりも安全保障理事会の権限が強いということを知らない人がいる。
 しかし、これは中学校の公民の教科書にちゃんと書いてある。
 「加盟国は総会の決議にしたがう義務はないが、安保理の決議にはしたがう義務がある」。

 まあ、早い話が国連というのは安保理中心の組織である。
 安保理は5つの常任理事国と、10の非常任理事国によって構成されている。
 非常任理事国は選挙で入れ替わるが、常任理事国は、アメリカ・ロシア・中国・イギリス・フランスでずっと変わらない。
 安保理では、基本的には9か国以上の賛成でものごとが決まるが、常任理事国には「拒否権」というものがあって、常任理事国の中の1国でも反対すると決議できないという決まりがある。
 (※このあたりも、しばしば入試で問われているところである)

 ということで、ここまでをまとめると、
 国連では総会よりも安保理の権限の方が強い。
 安保理では5つの常任理事国の力が強いので、国連という組織は、アメリカ・ロシア・中国・イギリス・フランスの意向で左右されることが多い。
 という結論になる。

 つまり、われわれが習ってきたような民主主義のルールで動いているわけじゃないんだな。

 国連は世界の平和と安全を守る組織と考えている人が多い。
 たしかに目的としてはそういうことなんだろうが、第二次大戦後、他国における紛争に武力介入したのは、ほぼ5つの常任理事国である。

 私は、だから国連など意味がないと言いたいわけではない。
 幻想を抱いてはいけない。事実や実態を冷静に見るべきだということを言いたいのだ。

  

 
 

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受験生・保護者の皆さん、学校や塾の先生方に最新情報をお届けします。ただし、結構頻繁に受験と無関係の話も。

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