fc2ブログ

共産党にしておくのが惜しい

 「つまびらか」は漢字で「詳らか」と書く。
 われわれの日常会話では、ほとんど使わない言葉だ。少なくとも私は、これまでに使った記憶はない。

 国会における日本共産党・志位和夫委員長との党首討論で、安倍首相は、志位委員長の「ポツダム宣言にある、この戦争は間違った戦争だという認識を認めるか」という質問に、「私もつまびらかに承知をしているわけでございませんが、ポツダム宣言のなかにあった連合国側の理解、たとえば日本が世界征服をたくらんでいたということ等も、いまご紹介になられました。私はまだ、その部分をつまびらかに読んでおりませんので、承知はしておりませんから、いまここで直ちにそれに対して論評することは差し控えたいと思います」と答えた。

 マスコミはさっそく、首相はポツダム宣言を読んでないのかと騒ぎ立てているが、記事を書いてる本人だって読んでないだろう。そんなもんだ。
 ちなみに、高校で歴史を教えていた私は、敗戦前後の事情を教えるにあたって、一応読んだ。ただし、つまびらかに読んだかというと、それはない。

 志位委員長が巧みなのは、先の戦争が誤った戦争だとの言質をとるために、ポツダム宣言を持ち出した点だ。

 ポツダム宣言受諾は、歴史的事実であり、これは誰も否定できない。
 その宣言の中に、「日本国国民ヲ欺瞞シ之ヲシテ世界征服ノ挙ニ出ヅルノ過誤」とある。つまり、当時の日本の指導者たちは「国民をだまして、世界征服のための戦争を引き起こした」と断じている。

 ポツダム宣言に署名したのは、アメリカ・イギリス・中華民国である。つまり世界征服云々というのは、当時の敵国(交戦国)の言い分である。

 世界征服?

 ヒトラーはどうか知らないが、当時の日本の指導者も国民も、まさか世界征服とは考えていなかったろう。
 また戦後、われわれは先の戦争が世界征服をたくらんだ戦争とは習ってこなかった。どう広げたってアジア全域までだ。

 しかし、ポツダム宣言を受諾したということは、この部分も含めて受け入れたのであるから、今さらどうしようもない。
 安倍首相は本音としては、ここのところを否定したかったんだろう。だが、「その部分をつまびらかに読んでおりませんので」と言葉を濁した。ここで世界征服の部分は承服できないなどと答えたら、またぞろ歴史修正主義者と批判されるからだ。

 志位委員長、実に巧妙だ。
 ポツダム宣言の認識を認めると答えれば、先の大戦は間違った戦争と認めたことになる。認めないと答えれば、歴史修正主義者のレッテルを貼られる。せっかく米国議会で演説して、そうしたイメージを払拭したというのに。

 で、結局、「つまびらかに承知してない」という曖昧な答弁をすることになって、今度は無知・不勉強を追求されることになる。

 ということで、この党首討論。志位委員長、大きくポイントゲット。民主党の岡田代表なんか、いつも言い返されるばかりだけど、さすがだ。共産党にしておくのは惜しい。

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

梅野弘之

Author:梅野弘之
受験生・保護者の皆さん、学校や塾の先生方に最新情報をお届けします。ただし、結構頻繁に受験と無関係の話も。

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
カテゴリ
当ブログを訪問された方
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード