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『夢を売る男』にだまされないために

 一昨日の話である。
 午後6時過ぎ、猛烈な雨に見舞われた。こりゃ止むまで待つしかないわいと浦和コルソで時間をつぶすことにした。

 ユニクロに行ってみた。ポロシャツでも買おうかと思ったが、ちょっと前まで棚を占領していたポロシャツやTシャツは片隅に追いやられ、このクソ暑い中、ダウンベストどもが店内を支配していた。ナニ考えてんじゃと言いたいが、梅雨明け前から夏物バーゲンが始まる時代だからしょうがないか。

 本の須原屋に行ってみた。学参コーナーで自分の本(「埼玉県公私立高校進学ガイド」)が置かれているかどうか確認した。あった。
 が、「棚差し」なので不利だ。平積みにしてほしい。今度、店員さんにお願いしてみよう。

 雨はしばらく止みそうもないから文庫本でも読んで暇をつぶそう。
 毎度お騒がせ人間・百田尚樹の『夢を売る男』を買った。

 『夢を売る男』の主人公は、素人相手の自費出版を主に扱う出版社の腕利き編集長だ。少しでも出版の世界を知っている人であれば、すぐに作中の「丸栄社」のモデルが、自費出版最大手の「文芸社」であることに気づくだろう。後半にライバル会社として「狼煙舎」が登場するが、これは倒産した「新風舎」である。

 出版界には自費出版というシステムがある。
 通常は、出版社が印刷・製本費やら広告宣伝費やら、すべての費用を負担し、著者には印税と呼ばれる報酬を支払うのだが、このシステムでは、費用の一部またはすべてを著者自身が負担する。
 こうしたビジネスモデルが成立するのは、自分で金を出してでも著書を出版したいという人が大勢いるからである。出版社側としては、費用は著者持ちであるから、売れなくても損をしない。著者は著者で「今度、本を出しました」なんて人に自慢して、ちょっとした作家気分を味わえる。

 ただ、自費出版は、トラブルが多い。
 素人は出版の仕組みなんて分からないし、契約にも慣れていない。費用の相場なんてものも知らないだろう。だから、これから自費出版でもと考えている人は、夢を買う前に一度この本を読んでおくといい。

 ちなみに、私は以前、出版関係にいたことがあり、本の編集から流通・販売にいたるまで一通り経験している。出版流通大手のトーハンには新刊が出るたびに行かなければならなかったし、丸善・紀伊国屋書店・三省堂書店をはじめとする多くの書店には営業で回った。本は置く場所や置き方によって売上が左右されるので、書店員さんと懇意にしておくことが大事なのは、この時に学んだ。

 さて。
 物語の後半、「丸栄社」は新たな顧客として、ブログ執筆者に狙いを定める。
 主人公の編集長によれば、毎日ブログを書き続けているようなヤツは、自己顕示欲の塊だから、カモにしやすいんだそうだ。

 う~ん、見事に言い当ててる。
 フェイスブックでもツイッターでもみんな同じだ。読んでもらいたいと思うから書いてる。
 「おーい、みんな。俺はここにいるぜ。こんなもの食ったぜ。こんなこと考えてるぜ。こっち見てくれよ。話を聞いてくれよ」。
 これが自己顕示欲じゃなくて、なんだ。

 「あなたのフェイスブック、注目していますよ。お友達の数、『いいね』の数。すごいじゃないですか。本を出したら、ますます増えますよ」
 「あなたのツイッター、フォローしてますよ。目のつけどころが並の人間とは、何というか次元が違いますね。まとめて本にしませんか」
 「あなたのブログ、毎日読んでます。発想にも表現にも天賦の才というものを感じますね。どうです、作家デビューしませんか」

 などとおだてられたら、いちころだ。自己顕示欲の塊の皆さん、くれぐれも注意しよう。

 ま、私の場合は、出版社の営業と十分に渡り合える程度の知識を持っているわけだが、「俺はプロだからね」なんて思い上がっている人間ほど危ないというから、おだてに載せられないよう人一倍注意しなければならない。

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受験生・保護者の皆さん、学校や塾の先生方に最新情報をお届けします。ただし、結構頻繁に受験と無関係の話も。

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