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埼玉では、なぜ「確約」が広まったのか(2)

 昨日までの話では、まだ私立高校が登場していない。

 またまた古い話で恐縮だが、今から49年前、私は県立高校を第一希望として受験した。
 北辰テストは校内で受けていたが偏差値はまだ使われていなかった。担任は、校内順位からみて大丈夫だと言った。そういう時代である。
 担任は、一応「すべり止め」を受けておくべきだと言い、都内の2校を挙げた。当時は県内には私立がほとんどなかったので、それが普通だった。
 そのうちの1校を受け、試験の翌日か翌々日に合格通知が届いた。親はとりあえず喜んだが、担任は特に何も言わなかった。事前相談で結果を知っていたからだ。

 つまり、今で言う「確約」ないしはそれに近いことは、ずっと以前から行なわれていた。ただ、「確約」という言い方はなかった。また、高校側と相談するのは、塾でも受験生本人でもなく、中学校の先生であった。

 では、今日のように、受験生本人が私立高校と直接相談して「確約」をもらうというシステムはどのように始まったのか。

 私立高校は、中学校との事前相談ができなくなった後、ただちに受験生本人を交渉相手に切り替えたかというと、そうではなかった。だから、しばらくの間、明確な「確約」のない時期が存在した。
 そうすると受験生は「すべり止め」を複数校受けることになる。絶対受かると思われる学校と、もしかしたら落ちるかもしれない学校という形だ。
 最近の受験生は、「すべり止め」の私立を落ちるという経験をしたことはないだろうが、そんな時代もあったのだ。

 さて、先を急ごう。
 県内の一部の学校が、「併願を認める推薦入試」というものを始めた。
 推薦入試というのは、本来中学校長の推薦があれば100%合格する入試である。合格を保証する代わりに1校しか受けない。受かったら入学する。これが推薦というものだ。

 しかし、この「併願を認める推薦入試」というのは、これまでの推薦の常識をくつがえすものだった。受かっても入学しなくてもいい推薦、という新しい考え方だ。
 この場合、併願する学校とは公立なのだが、先に私立の入試が行われ合否が決まり、本来ならここですぐに入学金を払って手続きをするべきなのだが、公立の合否が決まるまで待ってもらえるという、受験生にとってはまことに好都合なシステムが考え出されたのだ。

 すると、そういうシステムのある私立に受験生が集まるから、他の学校も追随し、ついには早稲田・慶応・立教といった一部有名私立を除く、ほとんどの私立が取り入れることになった。

 さあそうなると、私立同士、「併願を認める推薦入試」でどれだけ受験生を確保するかの争いになる。
 そこで、いよいよ「確約」の登場である。

 「併願を認める推薦入試」が、確実に合格を保証する入試とイコールになって行くのである。
 受験生にとっては、絶対に受かる入試であるから、さらに有難い。
 私立としても、「確約」を与えることによって、自校だけを受けてもらえれば、より確実に受験生を集められる。
 ここに、双方にメリットがあるシステムが完成されたのである。

 また明日も続きそう。

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受験生・保護者の皆さん、学校や塾の先生方に最新情報をお届けします。ただし、結構頻繁に受験と無関係の話も。

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